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吉田キャスト工業株式会社

【初級編】溶湯の流れ方|鋳造の基礎知識

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鋳造をする上で、溶湯の流れと金属凝固の考え方はとても重要です。

鋳造時の溶湯の流れ方や金属の凝固時間、溶湯の粘性表面張力などの特性を充分に理解し、その対策を講じることで良い製品を作ることができます。

今回は、溶湯の流れ方と金属特性の基本を考察した上で、鋳造の適正温度をご紹介します。

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溶湯の流れ方

鋳造時の溶湯の流れ方の基本について考察します。

 

通常の溶湯の流れは、図1のように層状になって流れると考えられています。

図1の①は鋳型の壁との接触による摩擦係数が大きくなるので溶湯の流れは遅くなり、②③と中心部に近くなるにつれ、溶湯は早く流れます。

 

 図1

 

粘性と表面張力

溶湯の流れは摩擦の他に、金属の粘性と張力にも関係します。

金属の粘性

下の表は、水を基本として比較した金属の粘性を数値化したものです。

粘性は流体により異なり、気体→液体→個体の順に高くなります。溶融金属の温度も高くなると粘性は減少することが分かります。

溶解金属の粘性係数
融  体 密度(g/cc) 静粘性係数(CP) 動粘性係数(CS) 温度(°C)
999.89
999.22
958.35
1.792
1.004
0.282
1.792
1.004
0.295
0
20
100
鉱 油 0.80 500.00 625.00 20
アルミニウム 2.37 3.00 1.27 700
6.98 6.20 0.89 1600
水 銀 13.55 1.55 0.125 20
亜 鉛 6.54 3.56 0.55 500
9.20 3.89 0.43 1000
7.93 3.41 0.43 1140

 

動粘土係数は静粘土係数を比重で割った数値で、水より金属の方が少なくなっています。

一見すると、鋳型に流入する溶湯は水よりも流れやすい数値となりますが、液体の流れやすさには、粘性とともに表面張力が影響します。

 

金属の表面張力

液体内部の原子は、周囲の原子と引き合ってエネルギーの平衝がとれた状態で保たれますが、外部に他の物質があると引き合う力が不平衝状態となり、表面の原子が収縮する傾向にあります。
これを表面張力といい、液体の表面に常に働きます。

表面張力は物質の種類により異なり、さらに温度により変化します。

溶融金属の表面張力
金 属 温 度(℃) ダイン(dyn/cm)
20 72.75
アルミニウム 660 914
1536 1872
水 銀 -38.87 498
亜 鉛 419 782
960.7 1000 903 920
1083 1285
1063 1120 1140 1128
ス ズ 232 544
ニッケル 1454 1778
プラチナ 1769 1800
パラジウム 1552 1280
ルテニウム 2427 2250

※1ダインは質量1グラム (g) の物体に働くとき、その方向に1センチメートル (cm) 毎秒 (cm/s2) の加速度を与える力。

 

通常、温度が高くなると張力は小さくなります。しかし、金属は温度が高くても、水に比べて表面張力は非常に大きいことが分かります。

また、気化熱が大きい物質や溶湯表面に酸化被膜が発生する場合、張力はさらに大きくなると言われています。

つまり、粘性が水より少なくても張力が大きく働くため、溶湯は水よりも流れにくいと言えます。

 

鋳造の溶湯温度は高めに

溶湯の基本的な流れ方で、溶湯温度が低い場合の流れ方を示したものが下図です。

 

鋳型の壁との接触により図2の①の温度が低下すると粘性と張力が高くなり、溶湯の温度が固相温度以下になると凝固が始まります。

②の層は若干温度が高いので先進しますが、鋳型の内壁に触れると温度が低下して凝固します。これを繰り返し最後には③の中心部も同じプロセスで凝固します。

このプロセスで凝固した表面は、海岸の波打ち際にできる波紋と同じようなテクスチャーになります。
この表面は『湯皺(ゆじわ)』といい、鋳造欠陥の一種です。

 

溶湯は鋳型内空洞を通るときに冷却され、粘性と張力が増した結果流れが悪くなることが分かりました。

特に、その空洞の厚みが薄い場合や狭い場合には急速に冷却され粘性を増します。

 

鋳造の場合にはこれに打ち勝つ圧力が必要なので、温度も融点より高く設定します。

一般的には、1000℃前後の融点を持つ金属は融点より50~100℃高く1700℃以上の融点を持つ金属は、融点より150~200℃高く鋳込み温度を設定します。

一般的な鋳造温度
融点が1000℃前後の金属 融点から50~100℃高くする
融点が1700℃以上の金属 融点から150~200℃高くする