ワックス型とは、原型の形状が忠実に再現されたゴム型内の空洞に、インジェクションワックスを圧力により射出して作製する、原型と同じ形の立体コピーのことです。
ワックス射出の基本
この工程で鋳造を希望する数量のワックス型を射出成型します。用意するワックス型の数量は、鋳造の『歩留まり』を考えて、損失数を上乗せして決めます。
ワックス射出の際に、『形になり難い形状』や『引け(収縮によるヘコミ)』が発生する場合は、一般的に鋳造でも難しいと考えられます。この場合には、ワックス型の数を更に多目に用意しておく方がよいでしょう。
射出され成型されたワックス型は、1つひとつ検品を行い、『充填不足』『気泡』『歪み』『バリ』『湯じわ』『パーティングライン』の有無や状態などをチェックします。
良品と不良品を分け、手作業による修正が可能なものは修正工程に廻します。
そのまま鋳造を行うと、バリなどの余分なものが金属に置き換わり、ワックス時での修正以上に手間がかかってしまうので、この段階で出来る限りきれいに修正を行います。
ワックスポット(射出装置)の種類
ワックスを射出する装置には、大きく分けて以下の4種類に分類されます。
『大気圧力式』『真空機能付き』『真空・自動射出式』『彫刻用ワックス対応式』
ここでは、最も一般的な大気ワックスポットを使用したワックス型作製を掲載していますが、ワックス型作製についての基本は、機種の違いで変わるものではありません。どの機種に関しても『適切なワックス温度』や『適切な射出圧力』の選択が必要とされます。
ワックス射出・成型の流れ
step.1 ゴム型に粉を塗る
ゴム型にタルク又はベビーパウダーなどの粉を、ゴム型のベント部に擦り込むように塗り、射出時の空気の抜けを良くします。
パウダーを塗った最初のワックス型の表面は、粉により肌荒れを起しているので、2回目からの成型品を鋳造用とします。
step.2 ワックスを射出する
ゴム型押えを使用しながら、ゴム型をワックスポットの射出口に対して『平行』『水平』にして強めにゴム型を押し込みます。射出圧力が適切であれば、大きさにもよりますが、1秒もしないうちにゴム型内にワックスが充填されます。
『ゴム型押え』とは
射出作業を行う際にゴム型を押える器具です。これは、万が一溶けたワックスがゴム型から漏れ出しても手に火傷を負わないための処置と、ゴム型を押さえる圧力を平均させてワックス型の体積を一定化させるための2つの理由で使用されます。
step.3 中子を取り出す
ワックスが硬化したら、ゴム型を開け、中子などをゴム型パーツから取り外します。
step.4 ワックス型を取り出す
最後に湯道を持ちながらゆっくり丁寧にワックス型本体を抜き取ります。
意図的にバリを出す場合
真空を使用しない大気ワックスポットで微細なデザインのワックス型を取る場合には、『ワックスの完全充填』を優先させるため意図的にバリを出しながら射出成型し、後の修正工程でバ[/sg_popup]を除去する方法を用いる場合があります。
射出不良が起こった場合
ゴム型が暖まると、射出不良が発生しやすくなる傾向があるので、数を多く取る場合には、定期的にゴム型を冷やしながら作業を行います。その他の主な射出不良を説明します。
ワックスがゴム型の脇から勢いよく漏れ出す場合
『注入角度が不適切』『必要以上の圧力』『不適切なゴム型の押え方』『ゴム型を押す力の強過ぎ』のいずれかです。この場合、射出圧力がゴム型の外へ逃げてしまうため、ゴム型内の空洞にワックスが完全に満たされていない場合がほとんどです。
ワックス漏れが無いのに、ワックス型に射出不良が発生する場合
『ゴム型にベントを付ける』『ゴム型からワックスが漏れ出さない範囲で射出圧力を上げる』『射出時間を長めにする』のいずれかか、併用した処置を取ります。
ワックス型修正の流れ
step.1 バリを取り除く
発生したバリをヘラ(レクロン刀)や専用工具(ブローチ針)で丁寧に取り除きます。
step.2 気泡をチェックする
石座の中などの貫通穴に発生するバリを除去しながら、指なじみや特に先端部(爪など)などに気泡が無いかどうかをチェックします。
step.3 段差を消す
パーティングラインを消します。あまり段差やバリなどがある場合にはワックス型を取り直します。
step.4 完成
湯道の先端の形状を整え、ワックス型を完成させます。保管する場合は、ワックス型にキズや汚れが付かないよう注意します。
指輪の場合
右の写真のワックス型は、この撮影のために、意図的に注入圧力を上げてインジェクションしたものです。実際の作業では、この様なバリが発生した場合には、修正に手間がかかるため、射出圧力を下げてから、射出成型のやり直しをお奨めします。
ワックス型不良の原因
気泡が現れる
『ワックス溶解温度の高過ぎ』の場合と『ゴム型のベント(空気抜き)処理の不良又は不足』『真空のかけ過ぎによるもの』に分けられます。
ラインワックス等で埋めることも可能ですが、ワックス型の面を整えるのに時間と慣れが必要になるので、気泡が発生しないようベントなどをつけてゴム型を修正して再度ワックス型を作り直しする場合が殆どです。
ワックス型の決まった場所に必ず現れる気泡は、その箇所のゴム型に空気抜きの切り込み等を入れ、ゴム型の修正で対応します。
パーティングラインは
大きな段差として現れている以外は、一つずつ修正して、ラインを消します。
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