鋳造欠陥とは、鋳造工程において起きる鋳造(鋳物)の不具合のことを指します。鋳物の割れや表面の荒れ、内部に空洞ができる鋳巣など、不良現象は様々です。鋳造欠陥はいくつかの種類に分類され、それぞれ異なった原因を持っています。また、鋳造工程はいくつかの鋳造前工程があり、その前工程での不備でも鋳造欠陥に繋がるため、鋳造欠陥の原因は1つとは限らない複雑なケースがあり実際には複合的な原因が少なくありません。
代表的な不具合は、大きく6個のカテゴリーに分類されます。まずは「鋳込み不良」の原因と対策から見ていきます。
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鋳込み不良(湯回り不良)とは
鋳込み不良とは、溶湯を鋳型内に流し込む際、空洞に溶湯が完全に満たされず凝固してしまい、鋳造品が部分的に欠落する現象です。砂型鋳造などの現場用語では「なめられ」とも呼ばれています。
この鋳造欠陥は主に、溶湯や鋳型の温度が作用して起こる現象です。原因を充分に把握して対策すると解決する問題です。
鋳込み不良はなぜ発生するのか、その対策とは
鋳込み不良の発生は鋳造工程での溶湯や鋳型の温度などに起因します。また、地金量にも関係します。以下に、主な原因とその対策を5つ紹介していきます。
消耗材料から見直してみる
鋳込み不良の原因1 地金の不足
鋳型の空洞容積に対する溶湯量の不足から起こります。
① 地金の比重が正確でない
地金比重の計算が正確でわないと溶湯の絶対量が足らず鋳込み不良が起きます。
地金の比重計算(ワックスの場合)
溶湯量 = ワックスの比重 × 希望する鋳造地金の比重
②押し湯量を少なく見積りすぎている
押し湯量を少量にして地金量を削減している場合がありますが、それにより不良が起きている可能性もあります。一度、押し湯量を正確に見積もった状態で鋳造を行い、鋳込み不良が起きないか確認することを推奨します。
③地金の計算ミス
単純に計算に誤りがあり、地金が不足している場合があります。
鋳込み不良の原因2 鋳造温度の不足
① 地金の温度が低い
目視で地金が溶解していても、完全なる融点に達していない場合があります。この場合、溶湯を鋳型の細部まで流し込む前に金属が凝固してしまい、鋳型の先端部分が欠落する現象が起きます。
使っている地金の融点や鋳型に必要充分な溶湯温度をもう一度確認する必要があります。また、自動鋳造を行っている場合には、鋳造温度を高く設定してください。
② 鋳型の温度が低い
鋳型自体の温度が低い場合にも、地金が鋳型全体に行き渡る前に凝固してしまう可能性があります。電気炉等での焼成で設定した鋳造温度を確認し、必要であれば鋳造温度を50℃単位で上昇させて試してください。
鋳込み不良の原因3 ガスが排圧による溶湯の充填阻害
鋳型に含まれるガスや、地金そのものが保有するガスが抜けきっていない状態で溶湯を流し込むと不良が起きます。
また、ワックス以外で焼失用のモデルを使う場合には、一般的な焼成カーブだと焼失が完全に行われず、残渣や鋳型内に残留する可能性があり、この残渣がガス発生の原因となる場合があります。ガスの発生が多いと思われる場合はベントでガス抜き対策をします。
また、地金自体がガスを多く含有している場合もありますので、地金のガス抜きを行うことが有効な場合もあります。
鋳込み不良の原因4 吸引鋳造や加圧鋳造での圧力不足(正圧及び負圧)
加圧鋳造の場合、圧力をかけるタイミングなどの設定が正しく行われておらず、鋳型の細部まで溶湯が行き渡っていない場合があります。設定を変更して鋳造することを推奨します。
吸引鋳造の場合は、鋳型に適切な通気性が確保されているか(鋳型の壁厚や埋没材の混水比など)、又は真空ポンプの機能低下が発生していないか、配管の詰まりや真空漏れがないかどうかを確認してください。
上記以外にも原因として、ワックス型の製作時に欠落がある可能性もあります。
鋳込み不良の対策まとめ
原因と対策を紹介してきましたが、鋳込み不良が起こった時の対処法をまとめていきます。
チェックリスト
- 地金比重の再計算/地金量の再計測
- 地金と鋳型の温度を上げる
- 電気炉等の設定温度を確認し、50℃単位で上昇させて試してみる
- 押し湯量を正確に見積もる
- 地金の気体やガス抜きを行う
- 鋳造の圧力設定を見直す
- 鋳型の通気性の確保を行う
- 真空ポンプの状態を確認する
原因はひとつとは限りません。すべての項目をもう一度見直して様子をみてください。