加圧鋳造は、現在でも一部で行われている『圧迫蓋』による圧迫鋳造を原点とする鋳造方案で、鋳型の押し湯部に圧力をかけ鋳造をアシストする方法です。
鋳込み能力は、かける圧力により異なります。圧力容器(チャンバー)内に鋳型を置きコンプレッサーなどで作った圧搾空気や不活性ガスボンベの圧力を圧力容器全体に充填する方法が一般的です。
このため、コンプレッサーなどの吐出圧力により単位時間の圧力の充填度合いや絶対圧力が変わるため、圧力タンクに貯めた圧力をチャンバーに送り込む方法もあります。
また、鋳型を設置する容器内を減圧し、鋳造直後に大気圧に戻す『差圧鋳造』も加圧鋳造の一部として分類されます。
差圧鋳造では、理論的には約0.1MPaの加圧ということになり金属の種類や鋳造物の形状などにより圧力不足の傾向があります。
加圧鋳造は、ルツボから鋳型までの溶湯の移動距離が短く静かに注湯できるため、静動鋳造論に最も近い鋳造方案とされています。
代表的な3つの鋳造方案の中でいちばん『鋳造の方向性』を選ばない方法なため、ワックスツリーなどの形状に自由度があります。
理想に近い鋳造方案ですが、鋳型の内在ガスの置換効率が遠心鋳造と比べ劣るので、内在ガスの放出は鋳型の埋没材を通してガスを鋳型外に排出させる必要があります。
このため埋没材の密度が高すぎると鋳型の通気性が充分確保されず、ガス鋳巣の原因となります。
また、充填される圧力にもよりますが、充分な加圧が行われないと溝や角に収縮鋳巣が発生する場合があります。特に金属の液相(溶解時)での粘性が高い金属や融点の高い金属では、遠心鋳造と比べ堰の湯道は太めにする必要があります。
加圧鋳造機(底注ぎ法・傾注法)
圧力容器(チャンバー)の中に鋳型を設置し、容器全体に圧力をかける機構です。減圧と加圧ができるので、真空中溶解、加圧溶解が可能です。
加圧溶解は高温時の金属の蒸発を低減できるので、例えば亜鉛など気化しやすい金属のロスを、圧力を加えることにより抑制する効果が期待できます。
一部の加圧鋳造機では、バルブの開閉度合いにより圧力の充填速度を変えることが可能です。空洞部の大きな鋳型(肉厚形状)では加圧の速度を遅くし、鋳型の内在ガスと注湯の置換効率を高めガス排出を促進させることができます。
また、高圧型の加圧鋳造機の場合では、圧力の絶対値を上げることも可能です。
底注ぎ法の構造イメージ
■底注ぎ法■
■傾注法■