アスタチン
Astatine
1940年、アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校のデール・R・コーソン、ケネス・ロス・マッケンジー、エミリオ・セグレは、サイクロトロンを用いてビスマス209にα粒子(ヘリウム原子核)を照射し、原子番号85の新元素を人工的に合成した。これがアスタチンであり、最後に発見された天然ハロゲン元素でもある。
アスタチン(Astatine)という名称は、ギリシャ語で「不安定」を意味する astatos(ἄστατος)に由来する。これは、すべての同位体が放射性であり、安定同位体が一つも存在しないことを表している。
アスタチンは17族(ハロゲン元素)に属し、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素に続く最も重いハロゲン元素である。周期表上ではヨウ素の下に位置するが、重元素特有の相対論的効果の影響を受けるため、ハロゲン元素らしい性質だけでは説明できず、一部では金属的な性質も示すと考えられている。このためアスタチンは、半金属として分類される場合がある。
天然ではウランやトリウムの崩壊系列中で極めて微量生成されるが、半減期が短いため地殻中の存在量は極めて少ない。地球全体に存在する天然アスタチンは、常に約1 g未満しか存在しないと推定されており、天然元素の中でも最も希少な元素の一つである。
現在利用されるアスタチンは、主に加速器を用いて人工的に製造される。その中でもアスタチン211(At-211)は半減期約7.2時間でα線を放出することから、がん細胞を選択的に破壊する標的α線治療(Targeted Alpha Therapy:TAT)の有望な放射性医薬品として研究が進められている。
アスタチンは合成できる量が極めて少なく、化学的性質を直接調べることが難しい元素である。そのため、多くの性質はヨウ素との比較や理論計算によって推定されており、現在も研究が続けられている。
現在、アスタチンは実用化されている用途は限られているものの、放射性医薬品や核医学の分野で将来性が期待される重要な元素として注目されている。
| 元 素 記 号 | At |
| 陽 子 数 | 85 |
| 価 電 子 数 | 7 |
| 原 子 量 | 210(標準原子量は定義されていない) |
| 融 点 | 約302(推定) |
| 沸 点 | 約337(推定) |
| 密 度 | 約7 (推定) |
| 存 在 度 | 地球 実質ゼロppm(天然では極微量) / 宇宙 ほぼゼロ |
| 代表的な製品 | 標的α線治療(At-211)、放射性医薬品研究、核医学、放射化学研究 |
アスタチンは、天然に存在する元素の中で最も希少な元素として知られています。天然ではウランやトリウムの崩壊によって絶えず生成されていますが、半減期が短いため、地球全体に存在する量は常に約1 g未満と推定されています。この量は、地球上の金の総量と比べても桁違いに少なく、「最も手に入りにくい天然元素」ともいわれます。
近年では、アスタチン211(At-211)が放出するα線を利用した標的α線治療(Targeted Alpha Therapy:TAT)が注目されています。α線は飛程が非常に短く、がん細胞だけを集中的に破壊できる可能性があるため、次世代の放射線治療薬として世界中で研究が進められています。
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