トリウム
Thorium
1828年、スウェーデンの化学者イェンス・ヤコブ・ベルセリウスは、ノルウェーで発見された新しい鉱物を分析する中で未知の元素を発見し、これをトリウムと命名した。発見当初に分析した試料は別の鉱物であったことが後に判明したが、その後ノルウェー産のトール石(トライト:Thorite)から純粋なトリウムを分離し、新元素として確立した。
英語名 Thorium は、北欧神話に登場する雷神 トール(ソー)(Thor) に由来する。これはベルセリウスが北欧神話にちなむ名称を採用したものであり、現在でも神話に由来する代表的な元素名の一つとして知られている。
トリウムは銀白色の放射性金属で、空気中ではゆっくり酸化して灰色から黒色へ変化する。化学的にはアクチノイド元素に分類されるが、天然ではほぼ+4価のみを示し、ウランよりも安定した化学的性質を持つ。
天然では主にトール石(Thorite:ThSiO₄)やモナザイト砂に含まれており、ウランよりも地殻中に豊富に存在する放射性元素である。地殻中の存在量はウランの約3~4倍とされ、比較的豊富なエネルギー資源として注目されている。
トリウム232は半減期約140億年という非常に長い寿命を持つ天然放射性同位体である。トリウム自身は核分裂しにくいが、中性子を吸収するとウラン233へ変換され、このウラン233は優れた核燃料となる。そのため、トリウムは「核燃料親物質(Fertile Material)」として位置付けられている。
かつてはガスマントルの発光材料や高温耐火材料、特殊合金などにも利用されていたが、放射線管理の強化に伴い現在では使用が大きく減少した。一方で、トリウム燃料サイクルは高い資源量や長寿命放射性廃棄物の削減が期待されており、将来の原子力発電技術として世界各国で研究が進められている。
現在、トリウムは実用用途こそ限定的であるものの、次世代原子力技術を支える有望な核燃料資源として重要視されている。
| 元 素 記 号 | Th |
| 陽 子 数 | 90 |
| 価 電 子 数 | 4 |
| 原 子 量 | 232.0377 |
| 融 点 | 1750 |
| 沸 点 | 約4790 |
| 密 度 | 11.72 |
| 存 在 度 | 地中 約10.5 ppm / 宇宙 約0.002 ppm |
| 代表的な製品 | トリウム燃料サイクル研究、高温耐火材料(歴史的用途)、ガスマントル(歴史的用途)、特殊合金、放射線研究 |
-こぼれ話-
トリウムは「未来の原子力燃料」として長年注目されている元素です。トリウム232はそのままでは核分裂しませんが、中性子を吸収すると優れた核燃料であるウラン233へ変化します。このため、トリウムを利用する「トリウム燃料サイクル」は、資源量が豊富で長寿命放射性廃棄物を減らせる可能性があるとして研究が進められています。
また、トリウムはウランよりも地殻中に豊富に存在し、その埋蔵量はウランの約3~4倍とされています。インドでは豊富なモナザイト砂資源を背景に、将来的なエネルギー資源としてトリウム利用を国家プロジェクトとして推進しており、「トリウム原子炉」の実用化を目指した研究開発が続けられています。
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