日本のカスタマイズ鋳造機メーカー

吉田キャスト工業株式会社

鋳造用語集

カドミウム
Cadmium

1817年、ドイツの薬剤師・化学者フリードリヒ・シュトロマイヤー(Friedrich Stromeyer)は、医薬品として販売されていた炭酸亜鉛を検査していた際、一部の試料が加熱すると黄色く変色することに気付いた。当初は不純物によるものと考えられていたが、詳しく分析した結果、亜鉛とは異なる未知の金属元素が含まれていることを発見した。ほぼ同じ時期に、ドイツのカール・ヘルマン(Karl Samuel Leberecht Hermann)やヨハン・カール・ローロフ(Johann Karl Roloff)も独立して同じ元素を発見しており、1817年がカドミウム発見の年とされている。

元素名(Cadmium)は、ラテン語の「Cadmia(カドミア)」に由来する。Cadmiaとは、古代から亜鉛鉱石や炉内に生成する酸化亜鉛を指す名称であり、さらにその語源はギリシャ神話に登場するカドモス(Cadmus)にさかのぼるとされている。カドミウムが亜鉛鉱石から発見されたことにちなんで命名された。

カドミウムは、第5周期・第12族に属する遷移金属であり、銀白色で柔らかく展延性に優れた金属である。電子配置は [Kr] 4d¹⁰5s²、価電子数は2個で、通常は+2価の酸化状態を示す。耐食性に優れ、空気中では表面に酸化皮膜を形成するため比較的安定している。また、融点が低く加工しやすいという特徴も持つ。一方で、カドミウムおよびその化合物は人体に対する毒性が非常に高いことが知られており、多くの用途で使用が厳しく制限されている

天然では単独の鉱石として産出することは少なく、主に閃亜鉛鉱(せんあえんこう:Sphalerite)中に亜鉛の不純物として含まれている。そのため、現在利用されるカドミウムのほとんどは、亜鉛の製錬工程における副産物として回収される。

カドミウムは、かつてニッケル・カドミウム(Ni-Cd)二次電池の電極材料として広く利用されていた。また、防食性に優れることから航空機部品やボルト類へのカドミウムめっき、黄色や赤色の鮮やかなカドミウム顔料、低融点合金などにも使用されてきた。しかし、環境や人体への影響が問題となり、現在ではRoHS指令などにより電子機器への使用は大きく制限されている。一方、航空宇宙分野では代替が難しい用途もあり、現在でも限定的に利用されている。さらに、中性子吸収能が高いことから、原子炉の制御棒にも使用されている。

元   素   記   号   Cd
陽      子      数  48
価   電   子   数  2
原      子      量  112.414
融                点   321.1
沸                点   767
密                度   8.65
存      在      度   地球 約0.15 ppm    宇宙 約0.00006 ppm
代表的な製品  ニッケル・カドミウム電池、航空機用カドミウムめっき、低融点合金、カドミウム顔料、原子炉制御棒、中性子吸収材
-こぼれ話-

カドミウムは、日本の公害史において「イタイイタイ病」の原因物質として広く知られています。
1950年代から1960年代にかけて、富山県神通川流域では、鉱山から排出されたカドミウムが河川を通じて農地へ流入し、それを含む米を長期間食べ続けた人々に深刻な健康被害が発生しました。骨がもろくなり、わずかな動作でも激しい痛みを伴うことから、「イタイイタイ病」と名付けられました。
この出来事は、日本で初めて公害病として国に認定された四大公害病の一つとなり、その後の環境基準や排水規制、土壌汚染対策など、日本の環境行政が大きく発展するきっかけとなりました。
現在では厳しい環境規制により、一般の人がカドミウムによる健康被害を受ける機会は大幅に減少しています。しかし、この出来事は「便利な材料であっても、安全管理と環境対策が不可欠である」ということを教えてくれる、重要な歴史として語り継がれています。

 

鋳造用語 索引