ゴム円錐台 の上に組み立てた ワックスツリー の上から フラスコ を被せるように装着し、 埋没材 を注ぎ入れて硬化させる作業のことです。 埋没材 は水等で練って泥状にしてから使用します。この状態を 埋没材スラリー と呼びます。
埋没作業で使用するフラスコとは、ゴム円錐台のサイズ(ゴム円錐台内輪直径)と同じ直径のパイプ状の器具のことを言います。ステンレス製(商品名: ステンリング )が一般的ですが、プラチナなどの高融点の金属の鋳造用には、耐熱性を向上させたタイプ(商品名: アルマリング )の使用を推奨しています。
埋没材の種類
鋳造する地金の種類により、使用する 埋没材 の種類が異なります。ブ ロックモールド法 の ロストワックス鋳造 では、主に2つの種類を使い分けています。
石膏系結合型埋没材
主に金・銀・銅合金のロストワックス鋳造に使用されます。
水を加えて練り、硬化させるタイプです。
シリカ系 無結合型埋没材
主にプラチナ・パラジウム系ホワイトゴールド・ステンレス等の 高融点金属 の鋳造に使用されます。
水だけを加えても硬化しないので、 バインダー を入れて、 脱水 方式と呼ばれる方法により(仮)硬化させるタイプです。
石膏系埋没材 は、730℃ぐらいから熱分解を始め、800℃以上で亜硫酸ガスなどのいわゆる石膏ガスを顕著に発します。このガスが 鋳巣 の原因となるため、 鋳型 を高温にしなければならない高融点金属の鋳造には使用できず埋没材の使い分けが必要となります。
埋没作業(手練り)の基本
ここでは、金・銀合金での例で工程を紹介します。 石膏系埋没材 を使用して、機械練りではなく『手練り』で行う場合で手順を説明します。
手練り(鋳造を利用せず、パーツを ロウ付 けなどで組み上げて製品とする方法)の場合には 混水比 が少ないとムラのない混練が難しいので、機械練り(混水比38%前後)と比べ混水比を若干多目(混水比40%程度)にしますが、混水量が少ない方が鋳造肌は滑らかになります。
石膏系埋没材の作業時間は、水温が20℃の状態で約10分とされています。埋没の際には、この10分間で、『混練』『1次脱泡(混錬攪拌後の脱泡)』『注ぎ込み』『2次脱泡(注ぎ込み後の脱泡)』を完了させなければ、硬化が始まってしまいます。
また、1次・2次の脱泡作業のどちらかでも省くと 埋没材スラリー 内に気泡が残り、鋳造時に地金の玉となって現れ、仕上げに手間がかかります。
埋没作業の流れ
準備
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1地金量を計算する
鋳造地金量を計算しておきます。
ワックスツリーの重量 - ゴム円錐台の重量 + 押し湯分の地金量
ポイント
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2ゴム円錐台を装着する
ゴム円錐台 に フラスコ を装着します。 ワックス型 を折ったり、傷つけたりしないように注意します。
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3フラスコにガムテープを巻く
装着したフラスコの上部にガムテープを巻きます。脱泡作業時、真空沸騰により 埋没材スラリー がフラスコからこぼれ出るのを防ぐことにより、 鋳型 として必要な埋没材量を確保します。
※硬化後、はみ出した埋没材はフラスコと同じ高さに削り落とします。
埋没材の混錬
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4埋没材を計量する
使用するフラスコの容積に合った埋没材を計量します。
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5水を計量する
埋没材重量に対する正確な水の量をメスシリンダーで計量します。
手練りの場合は混水比40%が標準です。
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6容器に埋没材と水を入れる
計量した水を入れた攪拌容器(写真はラバーボウル)に、STEP5で計量した埋没材を入れます。
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7攪拌する
石膏ヘラ等でムラなく泥状になるまで、しっかりと攪拌します。
脱泡と注ぎ込み
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81次脱泡をする
混錬が完了した 埋没材スラリー を容器ごと真空脱泡機にかけ、1次脱泡をします。
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9埋没材をフラスコに注ぐ
混練後に1次脱泡を行った埋没材スラリーを多少多目にフラスコに注ぎ込みます。
ワックス型が折れたり取れたりしないように注意します。
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102次脱泡をする
注ぎ込みの完了したフラスコを真空脱泡機にかけ、2次脱泡します。2次脱泡の際には振動を加え気泡の抜けを良くします。
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11硬化させる
2次脱泡が完了したフラスコは、振動のない場所で直射日光をさけて硬化させます。