不働態被膜(ふどうたいひまく)
Passive State Film / Protective Oxide Film / Passivation Layer
溶湯金属の界面や凝固した金属の表面にできる不働態被膜は、その金属や合金の耐食性や耐酸化性を決定づける非常に重要な薄層である。
この皮膜は、金属を外部環境から保護するバリア(遮断層)として機能する。
溶湯金属の界面にできる不活性膜(不働態被膜)
溶融状態(液相)の金属が、大気(酸素や水蒸気など)やその他の雰囲気ガスに触れる境界面(界面)に瞬時に形成される酸化物層。
■ 主成分
溶湯に含まれる成分のうち、酸素との親和性が最も高い金属の酸化物が優先的に形成される。(例:アルミニウム合金中のAl2O3、マグネシウム溶湯中のMgO、ベリリウム銅溶湯中のBeOなど)。
■ 酸化防止
溶湯金属は高温であるため、空気中の酸素と反応しやすい状態にある。
この皮膜は、溶湯内部への酸素の侵入を防ぎ、ドロス(大量の酸化物スラッジ)の発生を抑制する。
■ 蒸発抑制
亜鉛(Zn)やマグネシウム(Mg)など、蒸発しやすい合金成分が揮発して失われるのを防ぎ、合金の成分組成を保つ効果もある。
凝固した金属の表面にできる不導体被膜
いわゆる酸化被膜のこと。
凝固した固体金属の表面に、大気中の酸素や水分などと反応して自然に形成される、数ナノメートル(nm)レベルの極めて薄く緻密な保護層。
自然酸化皮膜とも呼ばれる。
この皮膜が安定している状態を不動態と呼ぶ。
■ 主成分
金属によって異なり、主にその金属の酸化物や水和酸化物。
● ステンレス鋼 : クロムと酸素が結合した酸化クロム(Cr2O3)を主成分とする皮膜。
● アルミニウム : 酸化アルミニウム(Al2O3)の皮膜。
● チタン : 酸化チタン(TiO2)の皮膜。
● ベリリウム銅 : 酸化ベリリウム(BeO)の皮膜。
■ 耐食性
この皮膜は不導体(電気を通しにくい)の性質を持ち、腐食の原因となる水やイオンが金属の本体(素地)に触れるのを防ぐことで、腐食(サビ)の進行を停止または大幅に抑制する。
鋳造用語 索引
