鋳造用語集

過電流トリップ(かでんりゅうとりっぷ)
Overcurrent Trip / Over Current Trip

これは、回路に設定値を超える過大な電流が流れたときに、機器を保護するために回路を自動的に遮断する保護機能及び、保護機能が作動するありさまを指す。
家庭のブレーカーが落ちるのもこの一種。

高周波誘導加熱装置では、電流が過剰に流れると、装置内部の電子部品やコイルに過剰な熱が発生し、損傷や故障の原因となる。
これを防ぐため、装置は常に電流を監視し、あらかじめ設定された上限値を超えた場合に、自動的に電源を遮断(トリップ)するよう設計されている。

誘導加熱で過電流トリップが発生する原因

  加熱コイルの金属の付着
加熱コイルとワーク(金属)は一定の距離を保ち、最適なインピーダンスで動作するように調整されている。
金属が加熱コイルに付着すると、このバランスが崩れる。
付着した金属は、コイルの隣接する巻線間を電気的に接続し、コイルの巻き数を実質的に減少させる。これにより、コイル全体のインピーダンスが急激に低下する。
インピーダンスが急激に低下すると、装置は過大な電流を流し始め、トランジスタなどの電子部品に過剰な負荷がかかると、内部回路を保護するために電流の安全上限値を超えると装置の保護のため自動的に電源を遮断する。

直接加熱の場合の粉体金属
粉末状の金属は、個々の粒子が互いに絶縁状態にあるため、電気抵抗が非常に高くなる。
この状態では、コイルと粉末間の結合(インピーダンス)が低く、装置は加熱に必要な電流を流すために、周波数を低くしてインバータ(トランジスタ)に大きな負荷をかける。
金属粉末が熱により加熱され、表面が融け始めると、粒子同士が接触して電気的に繋がりる。(この現象を焼結(sintering)という)
焼結が進行すると、粉末全体の電気抵抗が急激に低下し、加熱コイルと非加熱物(ルツボ内の金属)で構成される回路全体のインピーダンスが変化し、装置に流れる電流が急激に変化し、電流変化に追いつかない場合に過電流トリップが発生する。

直接加熱の場合の最低溶解量
被加熱物が小さいと、加熱コイルとの結合効率が低くなる。
これを補うために装置はより大きな電流を流そうとすることがあり、結果として過電流トリップに繋がる。
また、とくに少量の磁性体の金属を加熱する場合、インピーダンスや温度の変化が非常に速く、キュリー点を超した際の電気的特性の変化に装置の自動制御が追いつかないことがある。

 

 

 

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