鋳造用語集

無拡散型変態(むかくさんがたへんたい)
Diffusionless Transformation

原子が長距離を移動する拡散を伴わずに結晶が変化するという、「拡散型変態」とは対照的な概念を表す用語。

直接変態(Direct Transformation」と「無拡散型変態(Diffusionless Transformation)」は、しばしば同義として扱われるが、厳密にいうと「変態という現象のどの部分に焦点を当てるか」により、この2つの用語の意味が異なる。

  厳密な意味
直接変態と無拡散変態は、どちらも同じ現象を指している。
しかし、無拡散型変態は、原子が移動する時間がないほど、非常に速い冷却によって引き起こされると、原子の並び方(結晶構造)は変化するが、原子の組成は変化しないというプロセスに焦点を当てた表現。
また、これは、拡散型変態に対応する表現であり、直接変態がほぼマルテンサイト変態を指すのに対して、ニッケル-チタン合金(Ni-Ti)などの形状記憶合金で利用される変態も意味する場合が多く見られる。(このNi-Tiの変態も、メカニズムは直接変態やマルテンサイト変態と同じ。)

つまり、直接変態は、オーステナイトが中間相を経由せずに、一気にマルテンサイトに変態する様子に焦点を当てた用語に対し、無拡散型変態は、原子の移動のメカニズムに焦点を当てた用語であり拡散しない変態の総称

無拡散型変態の種類

■  双晶変態 (Twining Transformation)
外部からの応力によって双晶が形成されるプロセス(過程)を指す言葉。
これは、無拡散型変態の一種であり、結晶格子が協調的に剪断変形を起こして、双晶という新しい構造が生まれる。
■  マルテンサイト変態 (Martensite Transformation)
鉄鋼を高温から急冷したときに、結晶構造が瞬時に変化する現象。
この変態によって、鋼は非常に硬く、もろくなる。
■  ベイナイト変態 (Bainite Transformation)
マルテンサイト変態と拡散変態パーライト変態など)の中間的な性質を持つ変態。
厳密には拡散を伴うが、その速度は非常に遅く、せん断変形が主な駆動力となるため、準直接変態とも呼ばれる。

 

 

 

 

鋳造用語 索引

© 2025 吉田キャスト工業株式会社