※ロストワックス鋳造のブロックモールド法(ソリッドモールド法)の解説です。
ロストワックス鋳造用の電気炉を探していると、陶芸用やガラス工芸用など様々な炉が出てきます。その中には、鋳造用より安い炉もあるのではないでしょうか。
では、他の炉を代用して鋳型の焼成ができるのか?
結論から言いますと、ある条件が揃えば代用が可能です。
この記事では、ロストワックス鋳造用で使える電気炉の条件とその理由を分かりやすく解説していきます。
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ロストワックス鋳造の専用炉
まず、ロストワックス鋳造の炉で求められる条件とはどのようなものがあるでしょうか。
ロストワックス鋳造の炉で必要な条件
- 必要十分な温度が上がること
- 空気の入り口と出口があること
- ワックスの排出ができること
- 炉内の温度分布に差がないこと
この条件が満たされれば、ロストワックス鋳造の炉として使用できます。
必要十分な温度が上がること
ロストワックス鋳造では、鋳型の材料である埋没材が焼き固まる温度まで上がらなければなりません。
金・銀・銅合金用の石膏系埋没材の場合には最高温度到達は800℃。また、ステンレスや一部のニッケルシルバーなどのニッケル系合金の中でもニッケルの含有率の高い合金、プラチナ鋳造で使用するシリカ系埋没材では900℃が必要です。
最高到達温度はカタログなどに記載されている仕様で確認することができます。
注意
カタログに記載されている到達温度は、炉内に何もない状態で上がる温度を表示している場合があります。
炉内に入れる物の材質や量により温度上昇の度合いが変わるため、希望する時間内に温度が到達しない可能性がありますので、事前に確認が必要です。
空気の入り口と出口があること
ロストワックス鋳造とは、鋳型内のワックスをロスト(燃焼)して鋳造することを指します。つまり、炉内でワックスを燃やすためには『空気を取り込む入口』が必要です。
同時に物が燃えた後の二酸化炭素を排出する出口も必要になります。
充分な空気がないと、中の物は燃焼しきれずに炭化物として残ります。バーベキューなどに使う炭と同じようなものです。
炭化物が熱い溶湯に触れるとガスを出し、ガス鋳巣の原因になります。
これを防止するためにロストワックスの専用炉には、換気口が必ずあります。
ワックスの排出ができること
鋳型内のワックスは、温度が上がると溶けて鋳型から流れ出ます。
その溶けたワックスの行き場を作るために鋳型の下に最低3~4cm程度の台を置くので、想定より炉内の高さが必要になります。
理論上、温度が上がればワックスは燃焼しますが、溶けたワックスが炉床に溜まると鋳型内に新鮮な空気が入りにくくなる場合があります。
さらに複数の鋳型を焼成するのであれば、できれば炉の床に溶けたワックス用の排出口があると、空気を十分取り込むことができます。
炉内の温度分布に差がないこと
炉内の温度は均一でなければなりません。
温度が違うと鋳型を均一に焼くことができないため、炉内に熱気をムラなく行き渡らせて温度分布を平均化します。
そのためには、鋳型と炉のヒーターや排気口との距離を保ち、鋳型どうしの間隔も空けます。
空間を保つには、鋳型の寸法より大きな炉が必要になります。
他の炉で代用ができるのか?
鋳造用の炉は、上記の条件が揃えば他の炉と代用ができます。
ただ問題は代用できる手頃な炉には焼却炉を除いて穴(空気口)などが開いていないのが普通です。
七宝炉などは比較的低価格ですが、排気口となる穴がありません。
そのため炉の天井にドリルなどで穴をあける必要があります。
また吸気口もないため、扉を少し開けることで空気を炉内に取り込むことができます。
脱ロウ工程では少し広めに、焼成工程では狭めに調整し、最後は完全に扉を閉めて空気の循環と温度上昇をコントロールします。
他の炉の到達温度が充分な場合には、炉のフタに1~3cm(炉のサイズによる)程度の切れ込みを入れる場合もあります。
穴を開ける時には一発勝負になる上に、排気口の場所や大きさの加減を考慮しなければならないので、あまりおすすめできる方法ではありません。
電気炉を使い慣れている方は、以下の注意することをお読み頂き、ぜひ試してみるのもいいと思います。
炉の取り扱いで注意すること(重要)
鋳型を焼成すると、特に脱ロウ工程でワックスが燃焼する臭いと煤が出ます。脱ロウ工程以降の工程でも埋没材から独特の臭いが発生します。
また、ワックスが燃焼する際にはダイオキシンが発生し、埋没材が燃焼すると熱分解によりガスが発生します。このガスは、約700℃以上で亜硫酸ガス(SO2)、1000℃付近で三酸化硫黄(SO3)です。
鋳型を焼成する際には、充分な換気が必要です。
また室内の換気ができても、近隣から「臭い」などの苦情が出る場合があります。
臭いを軽減するには、アフターバーナー(二次燃焼装置)と呼ばれる特殊な装置が必要です。
鋳型を焼成する際には健康や環境に充分配慮して、適切な環境保全を計って下さい。
※室内に焼成炉を設置する場合、その温度・容積・数量などにより消防法に定められた申請や適切な設置条件や防火対策をほどこし消防署からの許可が必要になります。