アンチモン / アンチモニー
Antimony
アンチモンは、原子番号51の元素であり、周期表では第5周期・第15族に属する半金属(メタロイド)元素である。古代から知られている元素の一つで、紀元前3000年頃のエジプトでは、硫化アンチモン(輝安鉱)が化粧品や顔料として使用されていた記録が残されている。金属アンチモンそのものは、中世ヨーロッパの錬金術師たちによって精製技術が発展し、15世紀頃には広く知られるようになった。
元素名(Antimony)の語源には諸説あるが、現在ではアラビア語の「ithmid(アンチモン鉱)」がラテン語を経て「Antimonium」となったという説が有力とされている。一方で、「単体では自然界に存在せず、常に他の元素と化合していることから、ギリシャ語で『孤独を嫌う』を意味するanti-monosに由来する」という説も古くから伝えられている。
アンチモンは天然では単体として産出することもあるが、その多くは硫化鉱物である輝安鉱(Stibnite:Sb₂S₃)として存在する。現在の工業生産も主に輝安鉱から行われており、中国をはじめとする国々が主要な産出国となっている。
電子配置は [Kr] 4d¹⁰ 5s² 5p³ で、価電子を5個持つ。半金属特有の性質を示し、金属光沢を持ちながらも硬くてもろく、電気伝導性は金属と非金属の中間である。化学的には−3価、+3価、+5価の酸化状態を示し、ヒ素とよく似た性質を持つ。
現在のアンチモンは、防炎・難燃材料としての用途が最も多い。三酸化アンチモン(Sb₂O₃)はハロゲン系難燃剤と組み合わせることで優れた難燃効果を発揮し、カーテン、子供服、玩具、自動車や航空機のシート、電線被覆などの繊維や樹脂製品に広く利用されている。
また、鉛との合金では機械的強度や耐摩耗性、鋳造性が向上するため、鉛蓄電池の電極、電気ケーブル、鉛はんだ、活字合金、オルガンパイプ、銃弾などに使用されてきた。さらに、銅やスズなどとの鋳造用合金にも添加され、流動性や耐摩耗性を向上させる添加元素として重要な役割を果たしている。
一方で、アンチモン化合物には毒性を示すものも多く、日本では硫化アンチモンを除く多くのアンチモン化合物が毒物及び劇物取締法(毒劇法)において劇物に指定されている。その毒性はヒ素と化学的性質が似ていることに由来し、取り扱いや保管には十分な注意が必要である。
| 元 素 記 号 | Ir |
| 陽 子 数 | 51 |
| 価 電 子 数 | 5 |
| 原 子 量 | 121.760 |
| 融 点 | 約631 |
| 沸 点 | 約1587 |
| 密 度 | 6.68 |
| 存 在 度 | 地球 約 0.2ppm 宇宙 約0.00002 ppm(質量比) |
| 代表的な製品 | 難燃剤(三酸化アンチモン)、鉛蓄電池、鉛合金、鉛はんだ、活字合金、軸受合金、銃弾、鋳造用合金添加材・電気ケーブル・オルガンパイプ・銃弾の弾頭 |
-こぼれ話-
アンチモンの**元素記号「Sb」は、英語名の「Antimony」ではなく、ラテン語で輝安鉱を意味する「Stibium(スティビウム)」に由来しています。そのため、「なぜAntimonyなのに元素記号がSbなのだろう?」と疑問に思う人も少なくありません。実は、このように英語名と元素記号が一致しない元素は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、鉄(Fe)などにも見られ、古代から使われてきたラテン語名が現在まで受け継がれています。
また、アンチモンは古くから「金属を硬くする元素」として利用されてきました。柔らかい鉛にわずか数%加えるだけで強度や耐摩耗性が大きく向上するため、印刷用活字や蓄電池、弾丸などに欠かせない材料となりました。現在では難燃剤としての利用が主流ですが、「合金を強くする名脇役」として、2000年以上にわたり産業を支え続けている元素でもあります。
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