ボーリウム
Bohrium
1981年、西ドイツ(当時)の重イオン研究所(GSI:Gesellschaft für Schwerionenforschung、現在のGSIヘルムホルツ重イオン研究センター)のペーター・アルムブルスター(Peter Armbruster)とゴットフリート・ミュンツェンベルク(Gottfried Münzenberg)らの研究グループは、ビスマス209にクロム54イオンを照射し、原子番号107の元素の合成に成功した。生成された原子はわずか数個であったが、その崩壊系列を解析することで新元素であることが確認された。
発見当初は「ニールスボーリウム(Nielsbohrium:Ns)」という名称が提案されたが、その後IUPACとの協議を経て、1997年に現在のボーリウム(Bohrium)が正式名称として採用された。
元素名(Bohrium)は、デンマークの理論物理学者ニールス・ボーア(Niels Bohr)に由来している。ボーアは原子構造モデルを提唱し、電子殻の概念を確立するとともに、量子力学の発展に大きく貢献した人物である。その功績を称え、この元素名が付けられた。
ボーリウムは、第7周期・第7族に属する遷移金属であり、人工的に合成される超重元素である。電子配置は理論上 [Rn] 5f¹⁴6d⁵7s² と予測され、価電子数は7個で、通常は+7価および+5価の酸化状態を示すと考えられている。周期表でははマンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)の下に位置し、化学的性質もレニウムに類似すると予測されている。しかし、生成される原子数は極めて少なく、最も長寿命の同位体でも半減期は数十秒程度であるため、金属として取り扱える量を得たことはなく、その性質の多くは理論計算や数個の原子を対象とした実験によって明らかにされている。
ボーリウムは天然には存在せず、重イオン加速器によってのみ人工的に合成される。現在まで実用的な用途はなく、超重元素の化学的性質や原子核構造、相対論的効果の研究に利用されている。近年では、ボーリウムが揮発性の酸化物(BhO₃Clなど)を形成し、第7族元素らしい化学挙動を示すことが確認されており、周期表の規則性が超重元素領域でも成り立つことを示す重要な成果となっている。
| 元 素 記 号 | Bh |
| 陽 子 数 | 107 |
| 価 電 子 数 | 7(理論値) |
| 原 子 量 | [270](最も長寿命の同位体) |
| 融 点 | 約2700(理論値) |
| 沸 点 | 約5000(理論値) |
| 密 度 | 約37(理論値) |
| 存 在 度 | 地球 天然では存在しない 宇宙 確認されていない |
| 代表的な製品 | 実用用途なし(超重元素・基礎研究用) |
ボーリウムは、「周期表の規則性が超重元素でも成り立つことを証明した元素」の一つ。
超重元素では、電子が原子核の周囲を非常に高速で運動するため、相対論的効果によって化学的性質が大きく変化すると考えられています。そのため、ボーリウムもレニウムとは異なる性質を示す可能性が予想されていました。
しかし、わずか数個のボーリウム原子を用いた化学実験の結果、揮発性の酸化物を形成するなど、第7族元素であるレニウムによく似た化学反応を示すことが確認されました。
つまりボーリウムは、「周期表は超重元素の世界でも通用するのか」という疑問に対し、「基本的な規則性は今も成り立っている」という重要な証拠を与えた元素なのです。
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