臭 素(しゅうそ)
Bromine
1826年、フランスの化学者アントワーヌ・ジェローム・バラール(Antoine Jérôme Balard)は、南フランスの製塩所で海水から塩を採取した後に残る「にがり」を研究する過程で、新しい元素を発見した。当初は塩素やヨウ素の化合物と考えられていたが、詳細な分析によって未知の元素であることが確認され、新元素として認められた。
英語名 Bromine は、ギリシャ語で「悪臭」を意味する brōmos(βρῶμος)に由来する。これは、臭素およびその蒸気が刺激性の強い独特な臭いを持つことから名付けられたものである。
臭素は赤褐色の液体であり、常温・常圧で液体として存在する唯一の非金属元素である。揮発性が高く、常温でも赤褐色の蒸気を発生させる。この蒸気は強い刺激臭を持ち、目や呼吸器に対して強い刺激性を示すため、取り扱いには十分な注意が必要である。
化学的には第4周期・第17族に属するハロゲン元素である。電子配置は [Ar] 3d¹⁰4s²4p⁵、価電子数は7個で、通常は−1価を示すが、酸素やフッ素と結合する場合には+1、+3、+5、+7価**をとることもある。フッ素や塩素より反応性は穏やかであるが、ヨウ素よりは反応性が高く、多くの金属や有機化合物と容易に反応して臭化物を形成し、酸化剤として利用されることも多い。
天然では単体として存在することはほとんどなく、海水や塩湖、地下かん水などに臭化物イオンとして広く存在している。現在の臭素の世界における主要な生産国はイスラエル、中国、ヨルダンなどで、死海や地下かん水から臭化物を酸化して製造される。日本でも化学工業用原料として利用されている。
臭素化合物は難燃剤、写真感光材料、医薬品、農薬、染料、油井掘削液など幅広い用途を持つ。また、臭化銀(AgBr)は写真フィルムやX線フィルムの感光材料として長年利用されてきた。
一方で、一部の臭素系難燃剤については環境残留性や生体蓄積性が問題視され、近年では使用規制や代替材料への移行が進められている。しかし、医薬品や高機能材料などでは現在でも重要な元素であり、多くの臭素化合物が利用され続けている。
現在、臭素は化学工業や電子材料、医療分野などを支える重要なハロゲン元素であり、近年では環境負荷の観点から一部用途は減少しているものの、その特徴的な液体状態と高い反応性を生かして様々な産業で活用されている。
| 元 素 記 号 | Br |
| 陽 子 数 | 35 |
| 価 電 子 数 | 7 |
| 原 子 量 | 79.904 |
| 融 点 | -7.2 |
| 沸 点 | 58.8 |
| 密 度 | 3.12(20 ℃・液体) |
| 存 在 度 | 地殻 約2.5 ppm(地殻中) / 宇宙 比較的少ない |
| 代表的な製品 | 難燃剤、医薬品、写真用薬品、臭化カルシウム掘削液、精密化学品 |
臭素は、「常温で液体として存在する、わずか2つの元素のうちの1つ」です。
周期表には118種類の元素がありますが、常温・常圧で液体なのは臭素(Br)と水銀(Hg)
の2元素しかありません。
しかも、この2元素は性質が大きく異なります。水銀は唯一の液体金属であるのに対し、臭素は唯一の液体非金属です。
このように、周期表には「唯一」と呼ばれる特徴を持つ元素がいくつか存在しますが、臭素は「唯一の液体非金属元素」として特別な存在となっています。
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