粒界偏析(りゅうかいへんせき)
Grain Boundary Segregation
金属学用語
ミクロ偏析の一種。
粒界偏析とは、金属やセラミックスといった多結晶材料において、不純物原子や合金元素などの溶質が、隣り合う結晶の境目(粒界)に集まる現象。
酸素や窒素などのガス状元素は、侵入型溶質元素としてふるまい、結晶が晶出する際に偏析する。
※ イラストはイメージです。
■ 凝固開始
結晶の内部は原子が規則正しく並んだ安定した構造だが、粒界では原子の並びが乱れているため、高エネルギーの状態にある。
ここでいう高エネルギー状態とは、原子の配列が乱れていることを指す。
つまり、原子結合が不完全で、結晶内部と比べて単位面積あたりの自由エネルギー(粒界エネルギー)が高い状態であり、これは一種の表面張力のようなものと考えることができる。
■ 溶質元素の移動
この不安定な状態を解消しようと、溶質原子が粒界に移動して、材料全体のエネルギーを下げようとしする。この安定化しようとする力が、粒界偏析の熱力学的な駆動力となる。
溶質原子は、結晶内部(母相)の規則正しい格子に収まると、格子ひずみを生じさせ、母相のエネルギーを高める。これは、溶質原子のサイズが母相の原子と異なる場合に特に顕著となる。
一方、不規則で隙間が多い粒界に移動すると、この格子ひずみを緩和することができる。
つまり、溶質原子は結晶内部にいるよりも粒界にいる方が、系全体のエネルギーを下げることができる。
■ 身近な例
例えは、小さな穴で繋がれている2つの容器がの中に、それぞれ別の圧力をかけると、時間が経過するにしたがって高い圧力が低い圧力に移動し、やがて双方の容器の圧力が同じになるということと似ている。
この例の場合、高圧力容器が高いエネルギーの状態で低圧力容器が低エネルギー状態を指す。
「穴」は、溶質原子の移動経路を指し、結晶粒の場合には「粒界」にあたる。
圧力が異なる2つの容器を繋げると、システム全体(2つの容器)のエネルギーを下げるため、高圧側から低圧側へ流体が自発的に移動し、やがて圧力が等しい平衡状態(最も安定な状態)に達する。
■ まとめ
つまり、粒界偏析とは、原子の不規則な並びがもたらす高エネルギーな状態を安定させるため、特定の成分や不純物が粒界に集まり、結果として成分の偏りが生まれる。
この偏りは、しばしば合金を脆くしたり、錆びやすくしたりするなど、材料の特性を悪化させる。
ただし、有益な元素を意図的に粒界に集めて、材料の性質を改善する目的で利用されることもある。
鋳造用語 索引
