象 嵌(ぞうがん)
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「象嵌(ぞうがん)」は、一つの素材に別の素材をはめ込む工芸技法の総称。
「象」は「かたどる」、「嵌」は「はめる」という意味がある。
象嵌には、大きく分けて「金属象嵌(きんぞくぞうがん)」「木象嵌(もくぞうがん)」に分けられ、螺鈿(らでん)細工(アワビや夜光貝の内側にある真珠層を切り出し、漆器や木地の表面にはめ込んだり、貼り付けたりする装飾技法)も広義では象嵌の一種に分類される。
金属象嵌の種類
■ 平象嵌(ひらぞうがん)
土台の金属を彫り、同じ形に作った別の金属をはめ込む技法。
表面を平らに研磨して仕上げるため、手で触れても凹凸がなく、一枚の板に絵を描いたように見える。
■ 高肉象嵌(たかにくぞうがん)
はめ込む金属を土台よりも高く盛り上げ、立体的に仕上げる技法。
彫刻のようなボリューム感が出るため、非常に豪華で迫力のある仕上がりになる。
■ 線象嵌(せんぞうがん)
細い線状に溝を彫り、そこに金糸や銀糸のような細い金属線を叩き込む技法。
繊細な模様を描くのに適している。
固定する仕掛けによる分類(日本伝統工芸の知恵)
金属同士を接着剤なしで固定するための職人技。
■ 蟻溝式(ありみぞしき)
土台に彫る溝の底を、入り口よりも広く(「ハの字」型に)彫る技法。
ここにはめ込んだ金属を叩いて広げることで、物理的に抜けなくなる仕組みで、「加賀象嵌」などでよく見られる。
■ 布目象嵌(ぬのめぞうがん)
金属の表面に、目に見えないほど細かい格子状の切り込みを刻み、そのギザギザの上に金箔や銀箔を重ねて叩くと、ヤスリの目に引っかかるように金属が固定される。
この土台のテクスチャーが布地にみえるため、この名称がつけられている。
京都の「京象嵌」がこの代表。
特殊な表現方法
■ 切り嵌め象嵌(きりはめぞうがん)
土台を模様の形に完全に切り抜き(透かし)、そこに同じ形の別金属をぴったりはめ込んで裏から固定する技法。
表裏両面に同じ模様が出るのが特徴。
■ 消し象嵌(けしぞうがん)
水銀に金や銀を溶かした「アマルガム」を溝に塗り、熱を加えて水銀だけを蒸発させて定着させる、化学的な性質を利用した古い技法。
この方法を「金消し(きんけし)」と呼ぶ。
地域・流派による特徴
■ 京象嵌
京都府:鉄地に金・銀の布目象嵌を施す。繊細で雅やかなデザイン。
■ 加賀象嵌
石川県:蟻溝を用いた平象嵌が中心。複数の色金属を重ねる重厚な表現。
■ 肥後象嵌
熊本県 :鉄地に金・銀を打ち込む。武具(刀の鍔など)から発展した力強さ。
世界の有名な象嵌
■ ピエトラ・デュラ技法
イタリア:ピエトラ・デュラは、イタリア語で「硬い石」という意味。大理石などに貴石をはめ込む豪華な建築装飾。
イ ン ド: タージ・マハルの壁面装飾に見られる、白い大理石に色鮮やかな宝石を埋め込んだ装飾が有名である。
■ ダマスキナード技法
スペイン:トレドの伝統工芸で、金糸を鉄板に打ち込む技法。日本の布目象嵌に近いスタイル。
鋳造用語 索引
