マイトネリウム
Meitnerium
1982年、西ドイツ(当時)の重イオン研究所(GSI:Gesellschaft für Schwerionenforschung、現在のGSIヘルムホルツ重イオン研究センター)のペーター・アルムブルスター(Peter Armbruster)とゴットフリート・ミュンツェンベルク(Gottfried Münzenberg)らの研究グループは、ビスマス209に鉄58イオンを照射する実験を行い、原子番号109の元素を世界で初めて合成した。生成された原子はわずか1個であったが、その崩壊系列を解析することにより、新元素であることが確認された。
その後、追加実験によって発見が裏付けられ、1994年に発見が正式に認められた。1997年、国際純正・応用化学連合(IUPAC)は、この元素を「マイトネリウム(Meitnerium)」と命名した。
元素名(Meitnerium)は、オーストリア生まれの物理学者リーゼ・マイトナー(Lise Meitner)に由来している。マイトナーは、オットー・ハーンらとともに核分裂現象の理論的解明に大きく貢献した科学者であり、「原子力の母」とも称される。しかし1944年のノーベル化学賞は共同研究者のハーンのみが受賞し、マイトナーは受賞対象とならなかった。このことは現在でも科学史上最大級の「ノーベル賞の見落とし」の一つと考えられている。その功績を称え、この元素名が付けられた。
マイトネリウムは、第7周期・第9族に属する遷移金属であり、人工的に合成される超重元素である。電子配置は理論上 [Rn] 5f¹⁴6d⁷7s² と予測され、価電子数は9個で、通常は+3価や+1価などの酸化状態を示すと考えられている。周期表ではイリジウムの下に位置し、化学的性質もイリジウムに近いと予測されている。しかし、現在までに合成された原子数は非常に少なく、最も長寿命の同位体でも半減期は十数秒程度であるため、化学的性質を直接調べた実験はほとんど行われていない。そのため、多くの性質は理論計算によって予測されている。
マイトネリウムは天然には存在せず、重イオン加速器を用いて人工的に合成される。現在まで工業的・商業的な用途はなく、超重元素の原子核構造や相対論的効果、周期表の拡張に関する基礎研究のために利用されている。特に、超重元素がどこまで安定に存在できるのかという「安定の島(Island of Stability)」の研究において重要な役割を担っている。
| 元 素 記 号 | Mt |
| 陽 子 数 | 109 |
| 価 電 子 数 | 9(理論値) |
| 原 子 量 | [277](最も長寿命の同位体) |
| 融 点 | 約1100 - 1500(理論値) |
| 沸 点 | 約3500(理論値) |
| 密 度 | 約37(理論値) |
| 存 在 度 | 地球 天然では存在しない 宇宙 確認されていない |
| 代表的な製品 | 実用用途なし(超重元素・基礎研究用) |
マイトネリウムは、「ノーベル賞を逃した天才科学者」の名前を持つ元素として知られています。
元素名の由来となったリーゼ・マイトナーは、核分裂現象を物理学的に初めて正しく説明した人物でした。しかし1944年のノーベル化学賞は、共同研究者のオットー・ハーンだけに授与され、マイトナーは受賞者に含まれませんでした。
現在では、多くの科学史研究者が「マイトナーもノーベル賞を受賞すべきだった」と評価しており、この出来事は20世紀最大のノーベル賞選考の見落としの一つと考えられています。
1997年に元素名として「マイトネリウム」が正式に採用されたことは、彼女の科学的功績が世界的に再評価された象徴ともいえます。
現在ではマイトナーは、マリー・キュリーと並ぶ女性物理学者・核科学者の先駆者として広く知られており、マイトネリウムはその偉業を後世に伝える元素となっています。
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