マッシィーゾーン
Mushy Zone
合金の凝固プロセス中に生じる、液体(溶融金属)と固体が共存している領域を指す名称。
この領域は、純粋な金属が一つの温度(融点)で凝固するのに対し、合金が一定の温度範囲(凝固区間/平衡図中の液相線と固相線の間)をもって凝固する際に形成さる。
マッシィーゾーンの特徴
■ 相の共存
固体のデンドライトが成長し、その間に溶融金属(液体)が満たされている状態。
■ 温度勾配
凝固が進行するにつれて、固体側から液体側に向かって温度勾配が存在する。
この領域の温度は、合金の液相線温度(完全に液体となる温度)と固相線温度(完全に固体となる温度)の間にある。
■ 固相率の変化
マッシィーゾーン内では、固体であるデンドライトの割合(固相率)が連続的に変化しており、固体側の境界(固相線)で100%、液体側の境界(液相線)で0%になる。
■ マクロ偏析の要因
固体と液体が共存するこの領域では、デンドライト成長に伴い、溶融金属中の特定の元素の濃度が変化する。
この濃度の違いが、液体金属の流動(自然対流や重力による沈降など)を引き起こし、最終的な鋳造品にマクロ偏析(元素濃度の不均一性)を生じさせる主要な原因となる。
鋳造における重要性
■ 欠陥の発生
凝固収縮による体積減少を液体金属が補いきれない場合、マッシィーゾーン内で引け巣や多孔質鋳巣などの内部欠陥が発生しやすくなる。
■ 組織制御
マッシィーゾーンの温度勾配や冷却速度を制御することで、デンドライトの間隔や形状といった凝固組織が変わり、それが最終的な製品の機械的特性(強度、延性など)に大きく影響する。
■ 連続鋳造
連続鋳造においては、鋳片がマッシィーゾーンにある状態で機械的な変形(曲げ、ロール圧下など)を受けることがあり、これによって内部割れなどの問題が発生することがある。
鋳造用語 索引
