カリウム
Potassium
1807年、イギリスの化学者ハンフリー・デービー(Humphry Davy)が、水酸化カリウム(KOH)を電気分解することによって金属カリウムの単離に成功した。これは電気分解によって単離された最初期の元素の一つであり、従来は分解できないと考えられていたアルカリが、実は金属元素と結びついた化合物であることを示す重要な発見となった。
元素名の英語名Potassiumは、植物灰を水に浸して得たアルカリ性物質を煮詰めるために使われた「pot ash(壺の灰)」に由来する。
一方、元素記号がPではなく「K」なのは、ドイツ語などで用いられるKaliumに由来するためである。Kaliumはアルカリを意味する語と歴史的につながりを持つ。このためカリウムは、英語名Potassiumと元素記号Kの語源が異なる元素である。
カリウムは、第4周期・第1族に属するアルカリ金属元素である。電子配置は [Ar] 4s¹で、価電子数は1個、化合物中ではほぼ+1価をとる。銀白色の非常に柔らかい金属で、密度は約0.86と水より小さく、ナイフでも容易に切断できる。融点も約63.4℃と低い。
一方、化学的には極めて反応性が高い。空気中では速やかに酸化し、水と接触すると激しく反応して水酸化カリウムと水素を生成するとともに、大量の熱を発生する。条件によっては発生した水素などが着火することもある。このため金属カリウムは通常、空気や水分との接触を避けて取り扱われる。
天然には反応性の高さから単体では存在せず、長石類、雲母、カーナライト(KMgCl₃·6H₂O)、シルバイト(KCl)などの鉱物や塩湖・海水中に化合物として存在する。カリウムは地殻中に比較的豊富な元素である。
カリウムは生物にとって必須の元素である。人体には体重の0.2%のカリウムがとりこまれており、それを補うためのサプリメント、医薬品の鎮静剤やベーキングパウダーの主成分である。
植物の成長にも不可欠であることから、カリウム塩の最大の用途の一つが肥料である。窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)は肥料の三大要素として「N-P-K」と表示される。
カリウム化合物は、さまざまなものに利用される。食品の防腐剤や酸化剤としてもちいられる。
また、炭酸カリウムなどのカリウム化合物はガラス製造に利用されてきた。カリウムを含むガラスは組成によって高い硬さや光学的特性を持つものがあり、歴史的にも植物灰由来のカリウムがガラス原料として重要な役割を果たしてきた。
工業的には塩化カリウム(KCl)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カリウム(K₂CO₃)、硝酸カリウム(KNO₃)などの化合物として広く利用されている。肥料やガラスのほか、黄色の染料、メッキ液、漂白剤、蛍光灯、石鹸、化学薬品、電池、火薬・花火(淡い紫色/紫~赤紫色)など用途は幅広い。
金属鋳造との直接的な関係は大きくないが、カリウム化合物はフラックスや耐火物、ガラス・セラミックスなど、鋳造を取り巻く材料技術の中で関係する場合がある。ただし、金属カリウムそのものを一般的な鋳造用合金元素として使用することはほとんどない。
| 元 素 記 号 | K |
| 陽 子 数 | 19 |
| 価 電 子 数 | 1 |
| 原 子 量 | 39.0983 |
| 融 点 | 約63.4 |
| 沸 点 | 759 |
| 密 度 | 0.862 |
| 存 在 度 | 地球 9約20,900 ppm 宇宙 約3 ppm(質量比・概算) |
| 代表的な製品 | サプリメント・肥料・鎮痛剤・ベーキングパウダー・防腐剤・酸化剤・染料・ガラス・電気材料・蛍光灯・石鹸・漂白剤・爆薬・花火他 |
元素記号Kは、なぜPotassiumのPではない?
文中でも説明した通り、カリウムは英語でPotassiumと呼ばれるのに、元素記号は「P」ではなく「K」です。
これは、元素名と元素記号が異なる言語の歴史を受け継いでいるためです。
Potassiumという名前は、植物や木を燃やした灰を水に溶かし、それを壺(pot)で煮詰めて得られた「potash」に由来します。
昔の人々は木灰から得られるアルカリ性物質を、石鹸やガラスなどの製造に利用していました。その中には炭酸カリウムなどが多く含まれていました。
一方、元素記号のKは「Kalium」に由来します。
このKaliumという名称は、アルカリを意味する言葉と歴史的なつながりを持ち、現在でもドイツ語ではカリウムをKaliumと呼びます。
そのため、
英語名:Potassium
元素記号:K(Kalium)
という、一見すると不思議な組み合わせになったのです。
同じように、ナトリウムも英語ではSodiumですが元素記号はNa(Natrium)です。
元素記号には、現在の英語名だけでは分からない元素発見や命名の歴史がそのまま残されていることがあります。周期表を眺めるとき、元素記号の由来を調べてみるのも面白いかもしれません。
鋳造用語 索引