鋳造用語集

ツリウム
Thulium

1879年、スウェーデンの化学者ペール・テオドール・クレーベ(Per Teodor Cleve)は、エルビウムの酸化物を詳細に分析する過程で、新たな希土類元素を発見した。クレーベはエルビアが単一の物質ではなく、複数の希土類元素から構成されていることを明らかにし、その中からホルミウムとツリウムを分離した。当時の希土類元素は化学的性質が非常によく似ていたため、高純度で分離することは極めて困難であったが、クレーベの研究はランタノイド元素の分類を大きく前進させた。1920年代以降、イオン交換法などの高純度精製技術が確立され、現在のツリウムの性質が明らかになった。

元素名(Thulium)は、「トゥーレ(Thule)」に由来している。トゥーレとは、古代ギリシャ・ローマ時代に「世界最北の地」と考えられていた伝説上の土地であり、現在ではスカンジナビア地方を指していたと考えられている。発見者クレーベは、北欧で発見された元素であることにちなみ、この名称を与えた。

ツリウムは、第6周期・ランタノイド系列に属する希土類元素(レアアース)であり、銀白色で比較的柔らかく加工しやすい金属である。電子配置は [Xe] 4f¹³6s²、価電子数は3個で、通常は+3価の酸化状態を示す。空気中では徐々に酸化するものの、乾燥した環境では比較的安定している。ランタノイド元素の中では天然存在量が少なく、商業的にも希少な元素の一つである。

天然では主にモナザイト、ゼノタイム、バストネサイトなどのレアアース鉱石中に微量含まれている。他の希土類元素と混在して存在するため、高純度のツリウムを得るには溶媒抽出やイオン交換法などの高度な分離・精製技術が必要となる。

ツリウムは、その優れた光学特性からレーザー材料として利用されている。ツリウム添加レーザー(Tm:YAGレーザーやツリウムファイバーレーザー)は約2μm付近の赤外線を発振し、水への吸収率が高いため、医療分野では軟組織の切開や止血、泌尿器科・耳鼻咽喉科手術などに利用されている。また、高出力ファイバーレーザーとして金属加工や精密加工への応用も進められている。さらに、放射性同位体ツリウム170は携帯型X線装置の放射線源として利用された実績がある。

元   素   記   号   Tm
陽      子      数  69
価   電   子   数  3
原      子      量 168.934
融                点   1.545
沸                点   1950
密                度   9.32
存      在      度   地球 約0.5 ppm  宇宙 約0.0001ppm(質量比)
代表的な製品  Tm:YAGレーザー、ツリウムファイバーレーザー、医療用レーザー、金属加工用レーザー、携帯型X線装置(^170Tm)、研究用光学材料
-こぼれ話-
ツリウムは、天然に存在するランタノイド元素の中で最も存在量が少ない元素として知られています。(放射性元素であるプロメチウムを除く。)
地殻中の存在量は約0.5ppmと非常に少なく、年間の生産量も他のレアアースに比べてわずかです。そのため一般の工業製品に大量に使われることはほとんどありませんが、その希少性と優れたレーザー特性から、医療や精密加工といった高付加価値分野で重要な役割を担っています。
また、「ツリウム」という名前は、古代の人々が「世界の果て」と考えていた伝説の地トゥーレ(Thule)に由来しています。未知の北方世界への憧れが、そのまま元素名として現在まで受け継がれている、ロマンあふれる元素の一つです。

 

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