デジタル機を使って経験に左右されずに鋳造を行いたい。
そう思われている方も多いのではないでしょうか。しかし、デジタル鋳造機の『自動鋳造』はそこまで有能ではありません。『自動鋳造』がさまざまなデザインや金属に適合する鋳造条件を提供してくれるわけではないからです。
そこで、アナログ鋳造機とデジタル鋳造機を選ぶ時に注意したいメリット・デメリットを紹介していきます。
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デジタル鋳造機のメリット
メーカーのカタログでは、デジタル機の最大の特徴として、溶湯温度を検出して希望する温度になったら自動で鋳造ができる『自動鋳造』を売りにしています。
同じ金属でデザイン形状が似ているものを大量生産するには非常に有利な鋳造機です。これを使えば、運転者の経験に左右されずに安定的な品質を保てます。
例えば鋳造担当者が変わってもおおむね同じ品質で鋳造ができるので、今の時代には、これほど理にかなった鋳造機はありません。
しかし、デジタル機のデメリットも考えあわせる必要があります。
デジタル鋳造機のデメリット
近年では、製品のオンリーワン傾向や小ロット化、それに鋳造の合金の種類もさまざまなバリエーションが増えてきました。
市場は、『鋳造のしやすさ』や『鋳造の難易度』で鋳造金属を選んではくれません。
コストの安いものや、付加価値が高いもの優先されます。
初めて鋳造するデザイン形状や未知の金属に最適となる鋳造条件の入力は誰が行うのですか?
それは、あなたです。
製品品質は保証されない
残念ながら、さまざまなデザインや金属に適合する『チャンピオン・データ』を提供してくれるメーカーはありません。どんなメーカーでも機械動作に付いては仕様通りに動く保証はしますが、製品品質については保証していません。
最適な鋳造条件で自動鋳造ができない
また、特にプラチナなどの鋳造では、放射温度計が装備されています。これは、溶湯の発する光を温度に換算する装置ですが、例えばプラチナの銅割りなどの場合では、溶解時に煙が発生して光をさえぎり、正確な温度測定ができない場合もあります。
この場合には、なにしろ正確に測温ができないわけですから、当然最適な鋳造条件での自動鋳造が行えません。
アナログ鋳造機のメリット・デメリット
一方アナログ鋳造機は古いイメージがあります。実際にアナログ自動の鋳造機は発売以来すでに40年以上の歴史がありますが、現代でも需要があり、むしろアナログを好む方々もいらっしゃいます。
アナログ鋳造機は、鋳造条件のメモリーバンクは装備されていません。しかし、デジタル鋳造機では補えない『感覚的』な鋳造が行えるため、デザイン形状が一定でない場合や、鋳造金属が多様化している場合には、結果的に品質の向上につながる場合もあります。
つまり、鋳造条件を『数値化』しなくても、経験を生かして『とりあえずやってみる』ことができます。
アナログとデジタルを組み合わせた『デジアナ鋳造機』
メーカーによっては、『アナログ鋳造機』と『デジタル鋳造機』の両方の要素を組み合わせた『デジアナ鋳造機』を販売しているところもあります。これは、アナログ的に手動で鋳造をして、うまく行った条件をそのままデジタルデータとして記憶し、データメモリーを呼び出してデジタルで再鋳造を行うシステムです。
それぞれの鋳造内容や作り手の状況を考慮して『アナログ』『デジタル』『デジアナ』のどのタイプが一番合っているのかを考えて見てください。