鋳造欠陥とは、鋳造工程において起きる鋳造(鋳物)の不具合のことを指します。鋳物の割れや表面の荒れ、内部に空洞ができる鋳巣、銀の火ムラに代表される偏析など、不良現象は様々です。鋳造欠陥はいくつかの種類に分類され、それぞれ異なった原因を持っています。また、鋳造工程はいくつかの鋳造前工程があり、その前工程での不備でも鋳造欠陥に繋がるため、鋳造欠陥の原因は1つとは限らない複雑なケースがあり実際には複合的な原因が少なくありません。
代表的な不具合は、大きく6個のカテゴリーに分類されます。まずは「鋳肌の荒れ」の原因と対策から見ていきます。
このコラムのTOPICS
鋳肌の荒れとは
鋳肌の荒れはなぜ発生するのか、その対策とは
鋳肌の荒れの対策まとめ
鋳肌の荒れとは
鋳肌の荒れとは、埋没材で現れる表面祖度と比べて、鋳造品の全面、または一部の表面に滑らかさがない現象です。
主に鋳造温度に起因します。鋳造の一部が高温にさらされ、製品部の一部に「荒れ」が発生する場合や、埋没材と水の混水比や鋳型の通気性阻害などによるガス発生に起因する窪みなどが挙げられます。
鋳肌の荒れはなぜ発生するのか、その対策とは
鋳肌の荒れが起こる原因は大きく7つに分類されます。それぞれ原因と対策を紹介していきます。
鋳肌の荒れ原因1 溶湯温度が高すぎる
溶湯温度を高くしすぎるために、注湯時の溶湯と鋳型の表面との熱による化学反応よって起こります。また、極端な場合には埋没材との「焼き付き」が発生することもあります。溶湯温度を低めに設定し鋳造してください。
押し湯から製品部に直接溶湯が流れ込むワックスツリー形状では、湯道堰周辺にホットスポットが発生します。この場合は、押し湯から製品部までの湯道の距離や形状を変更してください。
また、製品形状で溶湯の流れが交わる場所も『ホットスポット』と呼ばれ熱による鋳造欠陥が発生する場合があります。

鋳肌の荒れ原因2 鋳型温度が高すぎる
鋳型温度が高すぎると溶湯温度が下がらず、鋳型表面との化学反応によって鋳肌が荒れることがあります。鋳型の鋳造温度を下げて鋳造してください。
鋳肌の荒れ原因3 残渣ガスの発生
残渣ガスによる鋳肌の荒れは、主に加圧鋳造に多く見られる現象です。
鋳型焼成において鋳型内の物が完全に焼失せず残渣が残った場合、鋳造時にその残渣から発生したガスにより製品部の全体または一部にヘコミとして現れます。
このガスは地金自体に含まれている場合や鋳型の通気性不足に起因する場合があります。残渣が残らないよう焼成温度勾配を変更する必要があります。
鋳肌の荒れ原因4 鋳型の水分量
① 水分量が多い場合
埋没材の混水比が多い場合、密度が低下して粒子間の隙間が大きくなり鋳型表面が荒れることがあります。
埋没材の混水比が高すぎないか確認してください。
② 鋳型の残留水分が少ない場合
過度に鋳型を乾燥させると鋳肌の荒れが起こります。
石膏系埋没材の場合、鋳型への埋没作業の完了から焼成開始までの時間が長く経過した場合や、非常に乾燥した環境で放置した場合に、鋳型から必要な水分が抜けて鋳肌の荒れにつながります。
鋳肌の荒れ原因5 ホットスポット
鋳造物の形状によりホットスポットが発生します。ホットスポットは放熱の効率が悪く、熱による鋳肌の荒れが発生しやすい場所になります。ホットスポットの冷却効率を改善する必要があります。
ホットスポットの対策は、以下のコラムを参照してください。
→ 【鋳肌荒れ・鋳巣】ホットスポットの対策|鋳造で大事な湯道方案
→ 【金属と凝固】(中級編)/ホットスポットの科学
鋳肌の荒れ原因6 燃焼不足
インジェクションワックス以外の素材、例えば植物や紙、あるいは彫刻用ワックスやその他のマシナブル素材など、加熱時に燃焼し、ススを発生させる可能性のある材料を鋳造する場合について、及び、ガラス転移点を持ち、粘性が高い材料について、不完全燃焼や、溶けた物質の高い粘性が問題を引き起こす可能性があります。具体的には、溶融した高粘性物質や燃焼した時の炎やススが鋳型の内壁を削り取り、鋳型の内壁を荒らしまうことがあります。
結果として、各材料が完全に燃焼・消失するための温度と時間、すなわち温度係留の時間が短すぎると、鋳型内に残渣が残り、これが鋳肌の荒れの原因となります。
したがって、美しい鋳肌を得るためには、材料の特性に応じた適切な焼成プロファイルを設計する必要があります。
■ 燃焼して軟化せず、昇華して炎を出すような素材
(例:特定のプラスチック、有機物)
焼成炉の焼成温度勾配で、材料が燃焼する少し前の温度から完全に消失するまでの温度を確認し、その時間を長くとる。
■ 軟化する軟化する材料
(例:一部の樹脂、高分子材料とワックスの混合物)
焼成炉の焼成温度勾配で、軟化点の温度と確認し、その時間を長くする。
鋳肌の荒れ原因7 湯皺(ゆじわ)
鋳物の表面にシワが発生する現象です。主に溶解不足によるもので鋳込み不良が発生する寸前の状態とも言えます。
鋳肌の荒れ原因8 通気性不足
石膏系埋没材の混水比が低いと通気性が損なわれます。
シリカ系埋没材などバインダーを使用して固める埋没材の場合は、バインダーの水の希釈率が低いまたは濃すぎる、またバインダー水溶液と埋没材粉の混水比が低すぎて起こる鋳型の通気性不足から、鋳型にガスが残留し窪みが発生する場合があります。
埋没材やバインダーの混水比を調整して通気性を確保してから鋳造してください。
また、シリカ系埋没材で使用するバインダーは高温でシリカに変化します。この鋳型を最高温度 (900~950℃)で長時間焼成するとバインダーの焼結が過多になり、シリカの焼結結合が進みすぎて通気性が阻害されます。
鋳型焼成時の焼結時間を短縮させて鋳造してください。
鋳肌の荒れ原因9 鋳型の崩れ
鋳型内の内壁が何らかの原因で部分的に欠落して局部的な鋳肌の荒れを起こします。これが見られる場合には『欠け込み』が発生していないか注意して下さい。
埋没材の粒 (粒の大きさ等)が荒い埋没材に起因する荒れもあります。
鋳肌の荒れの対策まとめ
原因と対策を紹介してきましたが、鋳肌の荒れが起こった時の対処法をまとめていきます。
チェックリスト
原因はひとつとは限りません。すべての項目をもう一度見直して様子をみてください。
