不活性ガス(ふかっせいがす)
Inert Gas
不活性気体ともいう。化学合成や化学分析や反応性の高い物質の保存に利用される反応性の低い気体である。
ガス元素のなかの、ヘリウム(He)・ネオン(Ne)・アルゴン(Ar)・クリプトン(Kr)・キセノン(Xe)・ラドン(Rn)・オガネソン(Og)の7元素から構成される。
1962年、キセノン化合物の合成に成功したことから、完全に反応しないわけではないことが明らかとなり、現在では不活性ガスではなく「希ガス(Noble Gases)」という名称が一般的に用いられている。
金属溶解で使用する場合には、2つの理由が挙げられる。一つ目は、元来の目的である「金属の酸化」を防ぐものである。
二つ目は、純黒鉛製のカーボンルツボを使用する装置について、カーボンの酸化消費を防ぐ目的がある。
不活性ガスの中で、窒素が一番安価であるが、窒化する金属には使用できない。また、純度が低いと酸素などの残留があるので、溶解金属が酸化したり、黒鉛ルツボの消費が激しくなる場合があるので注意する。
不活性ガスの使い分けについて特段の定義はないが種類により注意点がある。
■ クリプトンガス
熱を伝えにくいため電球のフィラメントを保護する目的で多用される。
■ キセノンガス
クリプトンよりも重く、熱を伝えにくい希ガスである。高輝度のキセノンランプやフラッシュランプ、自動車用放電ランプなどの光源に利用されるほか、医療分野や人工衛星・宇宙探査機のイオンエンジンの推進剤としても使用される。
化学的には非常に安定しているが、希ガスの中では比較的反応性が高く、フッ素や酸素などとの化合物を形成することが知られている。
金属溶解用の雰囲気ガスとして使用することは可能であるが、アルゴンと比較して希少で高価であるため、一般的な金属溶解で使用されることはほとんどない。
■ ヘリウムガス
大気中に存在するものの、工業用にはアメリカ合衆国のテキサス州やニューメキシコ州で採掘されたものに限定される。
極めて低い沸点を持ち、超電導体の冷却に使用される。安定したガスではあるが、コスト面から金属溶解用の不活性ガスとして使われるのは稀。
■ アルゴンガス
大気中のアルゴンは0.93%と窒素と比べ非常に少ないが、クリプトンガスやヘリウムガスなどの雰囲気ガスの中では窒素が安価で、一般的には冷却剤として使用されたり、窒素と同様にアーク溶接で使用される。
アルゴンは液体空気分離装置で製造が可能なためヘリウムのように産地の限定はない。
ほとんどの条件下で他の物質との反応は見られないため、金属溶解用の不活性ガスとして最も信頼がおける。
■ 窒素ガス
金属溶解などでは、非酸化性雰囲気をつくる安価なガスとして利用されているが、一部の金属で窒化などの反応があるため、不活性ガス(希ガス元素)として分類されていない。
不活性ガスなのに、不活性ではなかった?
20世紀半ばまでは、最外殻電子が満たされている希ガス元素は他の元素と結び付かないと考えられ、「不活性ガス」と呼ばれていました。
しかし1962年、カナダの化学者ニール・バートレット(Neil Bartlett)がキセノンとフッ素の化合物を合成することに成功し、この常識は覆されました。
この発見により、「化学的に絶対反応しない元素は存在しない」という新しい考え方が広まり、現在では「不活性ガス」ではなく「希ガス」という名称が用いられています。
この成果は現代無機化学における大きな転換点となり、現在ではキセノンを中心に100種類以上の希ガス化合物が知られています。
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