共析変態(きょうせきへんたい)
Eutectoid Transformation
鋼の組織が変化する現象の一つで、特定の温度(共析点)で起こる変態。
簡単にいうと、熱した鋼が冷えるときに、一つの組織が二つの別の組織に分かれる現象を指す。
共析変態のメカニズム
ステンレスは共析変態を起こす代表的な合金。
これを例に取ると、炭素含有量約0.77%の鋼(共析鋼)で最も典型的に見られる。この共析鋼を約727℃(共析点)以上に加熱すると、組織はすべてオーステナイト(Austenite)になる。このオーステナイトをゆっくりと冷却していくと、727℃で一気にフェライト(Ferrite)とセメンタイト(Cementit)の2つの組織が層状に形成されます。この層状の組織をパーライト(Pearlite)と呼ぶ。
身近なもので例えると・・・
① 熱いコーヒー(オーステナイト)には、たくさんの砂糖(炭素)が溶けている。この状態は均一で、一つの相(組織)である。
② このコーヒーを冷やすと、溶けきれなくなった砂糖が底に沈殿する。
③ 共析変態では、この砂糖の沈殿が、コーヒーの液体(フェライト)と砂糖の塊(セメンタイト)の二つの異なるものに分かれて、層状に並ぶ。
この「コーヒーと砂糖の層」のような状態になったものが、パーライトと呼ばれる組織である。パーライトは、柔らかい組織(フェライト)と硬い組織(セメンタイト)が組み合わさっているため、適度な硬さと粘り強さを持っ。
鋼以外の共析変態(例)
金 - 銅合金/Gold - Copper |
共析組成:金-約80%/銅-約20% 共析点:410℃ この合金系には、特定の組成と温度範囲で、高温のランダム固溶体が冷却されると、規則的な原子配列を持つ二つの異なる相(AuCu相とAu3Cu相)に分解する共析変態に似た現象が見られる。 簡単にいうと、高温でバラバラだった金と銅の原子が冷えると「金と銅が1対1」のペアと「金と銅が3対1」のペアに分かれて、きっちり整列する。 この変態は、貴金属である金と卑金属である銅の原子が、冷却によって規則正しく並び替わることで、合金の性質を変化させる。 |
銀 - スズ合金/Lead - Tin |
共晶組成:銀-約73%/鉛-約約27% 共析点:480℃ この合金系は、共晶反応(液体から2つの固体が生成する反応)がよく知られてるが、固体状態でも共析変態の反応が起こることが知られている。 高温の固溶体が、冷却によって銅が豊富な相と銀が豊富な相に分解する現象。 |
熱処理は、この現象をうまく利用することで、合金を硬くしたり、柔らかくしたり、目的に合わせて性質を変えることが可能となる。
→ 焼き入れ
→ 焼きなまし
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