マルテンサイト変態(まるてんさいとへんたい)
Martensite Transformation
鉄鋼を高温から急冷したときに、結晶構造が瞬時に変化する現象。
この変態によって、鋼は非常に硬く、もろくなる。
この変態は、原子が移動する時間がないほど高速で冷却されることでえられるため「拡散を伴わない変態(diffusionless transformation)」とも呼ばれる直接変態のひとつ。
変態のプロセス
■ 加 熱
鋼を特定の高温(通常は912℃以上)に加熱すると、結晶構造がオーステナイトと呼ばれる面心立方格子(FCC)に変化する(オーステナイト化)。
この状態では、炭素原子が格子内に均一に溶解している。
■ 急 冷(焼き入れ)
この高温状態から、水や油などを使って鋼を急冷する。
■ 変態の発生
冷却が非常に速いため、炭素原子が結晶格子から外へ移動する時間がない。
このため、オーステナイトの結晶格子が体心立方格子(BCC)に強制的にひずまされ、正方晶構造(BCT)となり、炭素原子がその中に閉じ込められた状態になる。
このひずんだ結晶構造をマルテンサイトと呼ぶ。
このひずみが、マルテンサイトの並外れた硬さの原因となる。
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