鋳造用語集

ベイナイト変態(べいないとへんたい)
Bainite Transformation

マルテンサイト変態拡散変態(パーライト変態など)の中間的な性質を持つ変態。
厳密には拡散を伴うが、その速度は非常に遅く、せん断変形が主な駆動力となるため、準直接変態とも呼ばれる。
直接変態

ベイナイト変態の種類

上部ベイナイト(Upper Bainite)
比較的高温(約350℃~550℃)で生成されるベイナイト変態の一種
羽根状や葉っぱのような形をしたフェライトと、その隙間にセメンタイト(炭化鉄)が分散している組織。
比較的粗い組織で、強度や靭性は下部ベイナイトよりも劣るが、衝撃に対する抵抗力が高いため、衝撃荷重がかかる部品やある程度の柔軟性が必要な部品に利用される。
加工性は良好である。

  下部ベイナイト(Lower Bainite)
比較的低温(約250℃~350℃)で生成されるベイナイト変態の一種
マルテンサイトに似た、非常に微細な板状のフェライトの組織。
炭化物は、フェライトの板の中に微細に分散してる。
微細な組織のため、上部ベイナイトよりも高い強度と靭性を持つ。
ベイナイト変態は、鋼に高い強度と靭性を同時に与えることができるため、クランクシャフトなどの自動車部品や工具など、硬さと強度が不可欠な製品に広く利用されている。

変態のプロセス

  加 熱
鋼を特定の高温(通常は912℃以上)に加熱すると、結晶構造がオーステナイトと呼ばれる面心立方格子(FCC)に変化する(オーステナイト化)。
この状態では、炭素原子が格子内に均一に溶解している。

  炭素原子の移動
冷却の際、核が形成された後、ごくわずかに炭素原子が核から拡散して移動する。
この拡散プロセスは、パーライト変態ほど速くない。

  形態の成長
ベイナイトは、せん断変形とわずかな原子の移動を伴いながら、オーステナイトの結晶粒内に板状または羽根状に成長する。
この独特の形態がベイナイトの組織を特徴づけている。

  最終組織
最終的に、微細なフェライトと炭化物(など)が混在した組織が形成される。

■  冷 却
目的に応じて、350℃~550℃で急冷すると上部ベイナイトとなり、250℃~350℃で急冷すると下部ベイナイトとなる。

ベイナイト変態が利用される理由

ベイナイト変態を利用する熱処理は、オーステンパリング(Austempering)と呼ばれ、の種類や冷却条件を細かく制御することで、上部ベイナイトまたは下部ベイナイトの組織を得ることが可能となる。

これにより、マルテンサイトのような焼き入れ焼きもどしのプロセスを経ることなく、目的の機械的特性を持つ製品を製造することが可能となる。

 

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