フェルミウム
Fermium
1952年11月1日、アメリカがマーシャル諸島で実施した世界初の水素爆弾実験「アイビー作戦(Ivy Mike)」の放射性降下物(フォールアウト)を分析した結果、アインスタイニウムとともに新しい元素が発見された。発見したのは、アルバート・ギオルソ(Albert Ghiorso)、グレン・T・シーボーグ(Glenn T. Seaborg)らの研究グループである。
この発見は国家機密として扱われたため、公表は1955年まで延期された。フェルミウムはアインスタイニウムと同様に、水素爆弾実験によって初めて発見された元素として知られている。
元素名(Fermium)は、イタリア生まれの物理学者エンリコ・フェルミ(Enrico Fermi)に由来している。フェルミは中性子物理学の基礎を築き、世界初の人工原子炉「シカゴ・パイル1号」の建設を指導した人物であり、「原子力時代の父」とも称される。その偉業を称え、この元素名が付けられた。
フェルミウムは、第7周期・アクチノイド系列に属する超ウラン元素であり、人工的に製造される放射性金属である。電子配置は [Rn] 5f¹²7s²、価電子数は3個で、通常は+3価を示す。銀白色の金属と考えられているが、製造量が極めて少ないため、金属としての物理的性質は十分には解明されていない。現在までに得られた試料は微量であり、その多くは放射能による自己発熱や自己照射損傷を受けるため、詳細な研究は困難である。
天然には存在せず、高中性子束原子炉においてプルトニウムやキュリウムなどへ繰り返し中性子を照射することで製造される。しかし製造効率は極めて低く、年間の生産量はナノグラムからマイクログラム程度に限られる。
フェルミウムには工業用途はなく、アクチノイド元素の化学的性質や核分裂反応、超重元素合成の研究など、基礎科学のために利用されている。特に、アクチノイド系列後半の電子構造や核物理学を理解するための重要な研究対象となっている。
| 元 素 記 号 | Fm |
| 陽 子 数 | 100 |
| 価 電 子 数 | 3 |
| 原 子 量 | |
| 融 点 | 約1527(推定) |
| 沸 点 | 約2000 - 2500(推定) |
| 密 度 | 約9.7(推定) |
| 存 在 度 | 地球 天然には存在しない 宇宙 確認されていない |
| 代表的な製品 | 実用製品なし(核物理学・アクチノイド化学の研究用) |
フェルミウムは、「100番目の元素」という、周期表の大きな節目となる元素です。
しかし、その記念すべき元素でありながら、現在までに製造された総量は極めて少なく、人類が一度に手にした量はマイクログラム(100万分の1グラム)にも満たないとされています。
また、フェルミウムより重い元素を中性子照射によって作ろうとしても、途中で自発核分裂しやすくなるため、それ以上の元素はほとんど生成できません。この現象は「フェルミウム・ギャップ(Fermium Gap)」と呼ばれ、超重元素の合成を難しくしている大きな要因の一つです。
そのため、原子番号100は単なる区切りではなく、「中性子照射による元素合成の限界点」として、原子核物理学においても特別な意味を持つ元素となっています。
「フェルミウム・ギャップ」を克服するため、人類は重イオン加速器を用いて原子核同士を衝突・融合させるという新しい方法を開発しました。現在発見されている原子番号101番以降の元素のほとんどは、この重イオン融合反応によって誕生しています。
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