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鋳造用語集

リ ン/燐(りん)
Phosphorus

リンは、原子番号15、元素記号Pで表される非金属元素であり、窒素族(第15族)に属する。

1669年、ドイツの錬金術師ヘニッヒ・ブランドによって発見された元素である。ブランドは「賢者の石」を得ることを目的として大量の人尿を濃縮・加熱し、その残留物を処理する過程で、暗闇で淡く発光する白色の物質を得た。これが白リンであり、人の体内に含まれる物質から新元素が発見された珍しい例でもある。

元素名のPhosphorusは、ギリシャ語で「光」を意味する「phos」と、「運ぶもの」を意味する「phoros」に由来し、「光を運ぶもの」という意味を持つ。これは白リンが空気中で徐々に酸化される際、暗所で淡く発光する性質に由来する。

リンは反応性が高いため、自然界では単体としてほとんど存在せず、主としてリン酸塩の形で存在する。代表的な鉱物としてリン灰石(アパタイト)があり、リン鉱石はリン酸やリン酸肥料を製造するための重要な資源となっている。

リンには、白リン、赤リン、紫リン、黒リンなど、原子の結合状態や結晶構造が異なる複数の同素体が存在し、同素変態する元素である。白リンは非常に反応性が高く、空気中で自然発火することがある。一方、赤リンは白リンより安定しており、安全マッチの摩擦面などに利用されている。黒リンは層状の結晶構造を持ち、電気的性質から半導体材料としても研究されている。

金属材料に含まれるリンは、その種類や含有量によって異なる作用を示す。鉄鋼では強度や硬さ、耐食性などを向上させる場合がある一方、結晶粒界に偏析しやすく、特に低温における靱性を低下させ、脆化の原因となる。このため、多くの鉄鋼材料ではリンは硫黄などとともに管理すべき不純物元素として扱われる。

一方、銅合金ではリンが脱酸材として利用されるほか、銅にリンを添加したリン脱酸銅や、銅-スズ系合金にリンを添加したリン青銅などが知られている。このようにリンは、金属材料に対して常に有害な元素というわけではなく、適切に添加・管理することで有用な合金元素としても機能する。

リンは生命にとっても極めて重要な元素である。人体ではカルシウムに次いで比較的多く存在する無機元素の一つであり、その多くはリン酸カルシウムなどとして骨や歯を構成している。また、DNAやRNAを構成するリン酸基にも含まれ、遺伝情報の保持と伝達に欠かすことができない。

さらに、細胞内でエネルギーの受け渡しを担うATP(アデノシン三リン酸)にもリン酸基が含まれている。筋肉の収縮をはじめ、細胞内で行われる多くの生命活動はATPを介したエネルギーの利用によって成り立っている。このためリンは、骨格をつくる材料であると同時に、生命活動そのものを支える基本元素の一つである。

工業的にはリン酸肥料が最大の用途の一つであり、このほか金属表面処理剤、防錆処理、難燃剤、安全マッチ、食品・化学工業、蛍光体、電子材料など幅広い分野でリン化合物が利用されている。半導体分野では、リンはシリコンに電子を供給するn型ドーパントとして重要な役割を持つ。

元   素   記   号 P
陽      子      数 15
価   電   子   数 5
原      子      量 30.973761998
融                点 44.15(白リン) 
沸                点 280.15(白リン) 
密                度 1.82(白リン) 
存      在      度 地球  約1050ppm   宇宙  約7 ppm(質量比・概算)
代表的な製品 リン酸肥料・表面処理剤・防錆剤・安全マッチ・難燃剤・蛍光体・電子材料・半導体など
-こぼれ話-
人の尿から発見された「光を運ぶ元素」

リンの発見には、錬金術の時代らしい少し変わったエピソードがあります。
1669年、ドイツのヘニッヒ・ブランドは、「人の尿には黄金につながる何かが含まれているのではないか」と考え、大量の尿を集めて濃縮し、加熱する実験を行っていました。もちろん金は得られませんでしたが、その代わりに暗闇で不思議に光る白い物質が現れました。これがリンです。
人間の尿にはリン酸塩が含まれているため、ブランドは知らないうちにそこからリンを取り出していたのです。人の排泄物から、それまで知られていなかった元素が発見されたという、元素発見史の中でもかなり珍しい出来事です。

さらに面白いのは、「Phosphorus」という名前そのものが「光を運ぶもの」を意味していることです。白リンは空気中でゆっくり酸化すると、暗い場所で淡い光を放つことがあります。電気も蛍光灯もない17世紀の人々にとって、自ら光って見える物質は非常に神秘的だったことでしょう。
そして、そのリンが現在では、骨や歯、DNA、さらには生命活動のエネルギーを受け渡すATPにまで含まれていることが分かっています。

錬金術師が「金」を求めて人の尿を煮詰めた結果、見つけたものは金ではなく、生命に欠かすことのできない元素だった――というのは、科学史の面白さを感じさせる話です。

 

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