結晶構造(けっしょうこうぞう)
Crystal Structure
原子、分子、あるいはイオンなどの構成単位が三次元空間にわたって規則正しく周期的に配列した固体(結晶)における、その幾何学的な配列の様式を指す。
結晶構造は、物質の硬さ、電気伝導性、融点、光学特性といった多くの物理的・化学的性質を決定する基本的な要素である。
■ 結 晶
構成粒子が長距離にわたって規則的に並んでいる固体。
■ 単位胞(単位格子)
結晶の構造を理解するための最小の繰り返し単位となる構造。
この単位胞が並進操作(平行移動)によって繰り返されることで、結晶全体が構成される。
■ 格 子
単位胞を構成する、仮想的な点の三次元配列を結晶格子(またはブラべー格子/ヴラベェ格子)と呼ぶ。
結晶構造の種類
金属は一般に、原子同士が金属結合という等方的な結合で結びついているため、原子(金属イオン)がパチンコ玉のように剛体球として、できるだけ隙間なく詰まろうとする傾向がある。
そのため、多くの金属は比較的単純で高い対称性を持つ構造を取る。
結晶構造は7種類の結晶系(Crystal System)に分類され、各結晶系には1種から4種の異なるブラベー格子がある。
■ 立方晶系(等軸晶系)
| 単純立方格子(SC)Simple Cubic | |||||
| 特 徴 | 原子の隙間が大きく熱力学的に不安定。 変形能力(延性)がなく非常に脆い。 金属的な性質が乏しく、工業材料としては使用されていない。 | ||||
| 滑 り 系 | 3 | 配 置 数 | 6 | 充 填 率 | 52% |
| 代表的な金属例 | ポロニウム (a-Po) | ||||
| 体心立方格子(BBC)Body-centered Cubic | |||||
| 特 徴 | 常温・高温で高い強度を発揮する。 温度低下に伴い急激に脆化する「低温脆性」を持つ。 | ||||
| 滑 り 系 | 12 | 配 置 数 | 8 | 充 填 率 | 68% |
| 代表的な金属例 | α鉄(α-Fe)・クロム(Cr)・モリブデン(Mo)・タングステン(W) バナジウム(V)・ニオブ(Nb)・タンタル(Ta)・ナトリウム(Na) | ||||
| 面心立方格子(FCC)Face-cemtered Cubic | |||||
| 特 徴 | 最密充填。 延性・靭性(粘り強さ)に非常に優れる | ||||
| 滑 り 系 | 12 | 配 置 数 | 12 | 充 填 率 | 74%(理論上最大) |
| 代表的な金属例 | アルミニウム(Al)・銅(Cu)・ニッケル(Ni)・金(Au)・銀(Ag) プラチナ(Pt)・鉛(Pb)・γ鉄(γ-Fe) | ||||
■ 正方晶系
| 単純正方格子(ST)Simple Tetragonal | |||||
| 特 徴 | 異方性(方向による特性の違い)があり、変形しにくく脆い特性を持つ。 実用的な金属材料としては用いられていない。 | ||||
| 滑 り 系 | 制限あり | 配 置 数 | 6(軸比に依存) | 充 填 率 | 変動(軸比に依存) |
| 代表的な金属例 | ネプツニウム (a-Np) | ||||
| 体心正方格子(BCT)Body-centered Tetragonal | |||||
| 特 徴 | 立方体が1軸方向に伸び縮みした歪んだ構造。 極めて高い硬度を持つが、粘り強さはない。 鋼を「焼入れ」した際に生じるマルテンサイト組織の正体であり、刃物や工具の硬さを担う。 | ||||
| 滑 り 系 | 制限あり | 配 置 数 | 8(軸比に依存) | 充 填 率 | 変動(軸比に依存) |
| 代表的な金属例 | 白スズ(βスズ)(β-Sn)・インジウム(In)・プロトアクチニウム(Pa) マルテンサイト(鋼の焼入相) | ||||
■ 斜方晶系
| 単純斜方格子(SO)Simple Orthorhombic | |||||
| 特 徴 | 3つの軸の長さが全て異なる直方体。 方向による熱膨張や硬度の差(異方性)が顕著。 異方性が強いため塑性加工は極めて困難。 | ||||
| 滑 り 系 | 制限あり | 配 置 数 | 6 | 充 填 率 | 変動(軸長比に依存) |
| 代表的な金属例 | ガリウム (Ga) | ||||
| 体心斜方格子(BCO)Body-centered Orthorhombic | |||||
| 特 徴 | 直方体の中心に原子が位置する構造。 特定の結晶面以外では滑り変形が起こらない。 一部の特殊金属や高圧・高温相として現れる。 | ||||
| 滑 り 系 | 制限あり | 配 置 数 | 8 | 充 填 率 | 変動 |
| 代表的な金属例 | ウラン (α-U) | ||||
| 面心斜方格子(FCO)Face-centered Orthorhombic | |||||
| 特 徴 | 直方体の全面中心に配置。 金属結合よりも分子間力や共有結合を持つ物質に多い構造。 単体金属には見られず、主に非金属元素の分子結晶として存在する。 | ||||
| 滑 り 系 | 制限あり | 配 置 数 | 8 | 充 填 率 | 変動 |
| 代表的な金属例 | ヨウ素 (I2)・塩素 (Cl2) (※いずれも非金属分子) | ||||
| 低心斜方格子(CCO)Bace-centered Orthorhombic | |||||
| 特 徴 | 上下面の中心のみに原子が位置。 結合力の弱い特定の面に沿って割れやすい(劈開性)特徴を持つ。 金属材料としての用途はなく、化学物質・結晶学上の分類となる。 | ||||
| 滑 り 系 | 制限あり | 配 置 数 | 8 | 充 填 率 | 変動 |
| 代表的な金属例 | 斜方硫黄(α-S)・臭素(Br2)(※非金属分子) | ||||
■ 単斜晶系
| 単純単斜格子(MO)Simple Monoclinic | |||||
| 特 徴 | 軸の1つが斜めに傾いた平行六面体。 対称性が低く、滑り変形が起こらないため非常に脆い。 構造用材料には一切適さない。 | ||||
| 滑 り 系 | 極めて制限 | 配 置 数 | 6 | 充 填 率 | 変動 |
| 代表的な金属例 | 単斜硫黄(β-S)(※非金属) | ||||
| 低心単斜格子(CMO)Base-centered Monoclinic | |||||
| 特 徴 | 傾いた格子の底面中心に配置。 金属結晶としては極めて複雑な原子配置となる。 放射性元素など極めて特殊な金属の常温相に見られる。 | ||||
| 滑 り 系 | 極めて制限 | 配 置 数 | 8 | 充 填 率 | 変動 |
| 代表的な金属例 | プルトニウム(α-Pu) | ||||
■ 三斜晶系
| 体心立方格子(BBC)Body-centered Cubic | |||||
| 特 徴 | 全ての軸長・角度が異なる最低対称性の構造。 力を受けても塑性変形せず、即座に破壊する。 最も複雑な結晶構造であり、金属単体ではエネルギー的に不安定なため存在しない。 | ||||
| 滑 り 系 | ほぼ無し | 配 置 数 | 6 | 充 填 率 | 変動 |
| 代表的な金属例 | 単体金属には存在しない(主に複雑な長石類などの鉱物・有機化合物のみ) | ||||
■ 三方晶系
| 菱面体格子 Rhombohedral | |||||
| 特 徴 | 立方体を斜めに歪ませた構造。 共有結合性が混ざり、金属光沢を持ちつつも非常に脆い(非延性)。 金属的な電気・熱伝導を示し、熱電変換材料などに利用される。 | ||||
| 滑 り 系 | 制限あり | 配 置 数 | 6(角度に依存) | 充 填 率 | 変動(角度に依存) |
| 代表的な金属例 | ビスマス(Bi)・アンチモン(Sb)・ヒ素(As) | ||||
■ 六方晶系
| 六方最密構造 (実用構造/単純六方格子)(HCP)Simple Hexagonal | |||||
| 特 徴 | 最密充填構造だが、滑り面が底面に限られるため加工硬化しやすく、加工性が低い傾向にある。 実用金属(MgやTiなど)は比重が軽く高強度なため、航空宇宙や軽量構造材に多用される。 | ||||
| 滑 り 系 | 3 | 配 置 数 | 12 | 充 填 率 | 74%(理論上最大) |
| 代表的な金属例 | マグネシウム(Mg)・チタン(α-Ti)・亜鉛(Zn)・ジルコニウム(Zr) コバルト(Co)・ベリリウム(Be) | ||||
鋳造用語 索引
