平面凝固(へいめんぎょうこ)
Plane-front Solidification / Planar Solidification
鋳造などの凝固過程において、溶融金属が鋳型の壁面から均一に固化が進み、固相と液相の界面がデンドライトなどの結晶で凸凹にならずに、平面で界面が移動する凝固の形態。
このことにより、偏析や金属間化合物などの介在物といった欠陥が減少し、鋳造物全体の品質が向上する。
また、凝固が制御された単一方向へ進み、特定の方向に揃った組織を作ることで、高温での強度や耐クリープ性を大幅に向上させることが可能となる。
平面凝固に必要な条件
■ 温度勾配(G / Temperature Gradient)
温度勾配とは、固化している部分と液化している部分の温度差を指す。
固液界面における温度勾配が、凝固速度(R)に対して十分に大きいこと。つまり、G/R (温度勾配÷凝固速度)が大きい状態が望ましい。
この状態では、固液界面で放出される凝固潜熱が効率よく外部に逃げていき、固相の面にデンドライトなどの突起が発生しないため、固液の界面が平面になる。
このため、不純物原子などが常に液相にあり鋳造物などの凝固物の表面に留まらずに凝固が進行していく。
固液界面にデンドライトなどが発生すると樹枝部(デンドライトアーム)などの隙間に不純物がつかまりミクロ偏析が発生する。
■ 冷却速度(R / Solidification Rate)
冷却速度とは、固液界面が単位時間あたりに移動する距離(固まって行く速さ)を指す。Rが大きいほど凝固が急速に進んていることを示す。
凝固速度が遅すぎず、速すぎないこと。遅すぎると凝固時間が長くなり、組織が粗大化する可能性が高くなる。
逆に速すぎると、不純物や気泡が固液界面に閉じ込められ、欠陥が生じやすくなる。
平面凝固の意義
健全な鋳造物を作るための凝固制御の指標となる。
G÷Rの値が大きいと、固液界面が安定し、平面凝固が起こりやすくなるが、この値が小さいと温度勾配が小さく、冷却温度が速いため、界面が不安定になり、樹枝状凝固や細胞状凝固が発生しやすくなり、偏析の原因となる。
まとめると、
① G(熱の逃げやすさ)が大きいと、凝固潜熱を素早く逃がすことが可能となり、固液界面の過冷却を防ぎ界面が安定する。
② R(凝固速度)が小さいと、凝固がゆっくりすすむため、物質の拡散が充分起こり、界面が安定する。
この結果、偏析の少ない強固な鋳物を得ることが可能となる。
→ 平面凝固
→ 細胞状凝固
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