プルトニウム
Plutonium
1940年、アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校のグレン・T・シーボーグ、エドウィン・マクミラン、ジョセフ・ケネディ、アーサー・ウォールらの研究グループは、サイクロトロンで加速した重陽子を用いてネプツニウム238を生成し、その崩壊によって新元素であるプルトニウムを発見した。翌1941年には、プルトニウム239が熱中性子によって容易に核分裂することが明らかとなり、その後の原子力開発において極めて重要な元素となった。
プルトニウム(Plutonium)という名称は、当時、太陽系第9惑星とされていた冥王星(Pluto)に由来する。ウラン(Uranium)が天王星(Uranus)、ネプツニウム(Neptunium)が海王星(Neptune)にちなむことから、その次の惑星であった冥王星の名が採用された。この命名は、周期表における元素の並びと太陽系の惑星の順序を対応させたものである。
自然界には極めて微量しか存在せず、現在利用されるプルトニウムのほとんどは原子炉内でウラン238が中性子を吸収し、ネプツニウム239を経て生成される人工元素である。使用済み核燃料の再処理によって回収され、再び核燃料として利用される。
プルトニウムは銀白色の放射性金属であるが、空気中では容易に酸化し、酸化皮膜を形成する。また、温度によって6種類もの結晶構造を示す同素変態を持ち、熱膨張率も大きいため、金属材料としては非常に扱いが難しい元素として知られている。
さらに、プルトニウムは複数の酸化状態(+3~+7価)を示し、化学的性質はウランやネプツニウムと類似している。一方で、自身の放射線によって結晶構造が徐々に損傷を受ける「自己照射損傷」を生じることも特徴である。
プルトニウム239は熱中性子によって高い確率で核分裂を起こすため、原子力発電用のMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)の主要成分として利用されている。また、高速増殖炉では重要な核燃料となる。
一方、プルトニウム238は核分裂燃料には適さないものの、放射性崩壊によって安定して熱を発生する。この熱を利用した放射性同位体熱電発電機(RTG)は、人工衛星や火星探査機、木星探査機など、太陽光の届きにくい宇宙空間で長期間電力を供給する熱源として利用されている。
プルトニウムは極めて高い放射線毒性を持ち、特に体内へ取り込まれるとα線による内部被ばくが問題となる。このため、製造・加工・保管には高度な放射線管理と厳重な安全対策が必要であり、一般産業で取り扱われることはほとんどない。
現在、プルトニウムは核燃料サイクルの中心となる元素であり、原子力発電、宇宙開発、放射性廃棄物管理など、多くの先端技術分野を支える重要な人工元素となっている。
| 元 素 記 号 | Pu |
| 陽 子 数 | 94 |
| 価 電 子 数 | 6 |
| 原 子 量 | 244(代表同位体) |
| 融 点 | 639*4 |
| 沸 点 | 3228 |
| 密 度 | 19.84 |
| 存 在 度 | 地球 (地殻中は実質0/天然には極微量/宇宙 ほぼゼロ* |
| 代表的な製品 | MOX燃料、高速増殖炉燃料、放射性同位体熱電発電機(RTG)の熱源(Pu-238)、核燃料サイクル研究 |
*「存在度ほぼゼロ」
プルトニウムには長寿命の安定同位体が存在せず、太陽系誕生時に存在したものはほぼ崩壊してしまったため。
現在天然に存在するプルトニウムは、ウラン鉱石中で中性子捕獲によって生成したPu-239が極微量存在するのみで、存在量を ppm や ppb で表す意味がほとんどない。
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