ポロニウム
Polonium
1898年、フランス・パリで研究を行っていたマリ・キュリーとピエール・キュリー夫妻は、ピッチブレンド(瀝青ウラン鉱)の放射能を調査する過程で、ウランよりもはるかに強い放射能を示す未知の元素を発見した。これがポロニウムであり、キュリー夫妻が発見した最初の新元素である。同年末には、さらにラジウムも発見している。
ポロニウム(Polonium)という名称は、マリ・キュリーの祖国である「ポーランド(Poland)」に由来する。当時のポーランドは独立国家ではなく周辺諸国に分割統治されていたため、祖国への思いを込めて元素名が付けられた。この命名は、科学の歴史において国名が元素名となった代表的な例として知られている。
ポロニウムは銀白色の放射性金属で、常温では金属光沢を持つが、空気中では容易に酸化する。テルルやビスマスと化学的性質が似ており、通常は+2価および+4価の酸化状態を示す。
天然ではウラン238の崩壊系列中で生成されるため、ウラン鉱石中に極めて微量存在する。しかし半減期が短いため、天然中の存在量は非常に少ない。現在利用されるポロニウムの多くは、原子炉内でビスマス209に中性子を照射して人工的に製造されるポロニウム210である。
ポロニウム210は非常に強いα線を放出しながら崩壊するため、小型で高出力な熱源として利用されることがある。また、このα線を利用して静電気除去装置、中性子発生装置(ベリリウムとの組み合わせ)、研究用放射線源などにも利用されてきた。
一方で、ポロニウムは人体に対して極めて高い毒性を持つ元素としても知られる。α線は紙一枚で遮蔽できるほど透過力は弱いが、体内へ取り込まれると周囲の細胞へ非常に大きな損傷を与えるため、極微量でも重大な健康被害を引き起こす可能性がある。
現在では一般産業で利用されることは少なく、その用途は研究機関や特殊な放射線利用分野に限られている。しかし、放射能研究の歴史においては極めて重要な元素であり、放射線科学の発展を象徴する元素の一つとなっている。
-こぼれ話-
ポロニウムは、元素名に国名が採用された最初の元素として知られています。マリ・キュリーは、当時地図上から消えていた祖国ポーランドの存在を世界に示したいという思いから、「Polonium(ポロニウム)」と命名した。
また、Po-210は1 gあたり約140 Wもの崩壊熱を発生するため、非常に小さな質量でも高い熱出力を得られる放射性同位体として知られている。この特性から、かつては宇宙機器などの小型熱源として利用された歴史もある。
| 元 素 記 号 | Po |
| 陽 子 数 | 84 |
| 価 電 子 数 | 6 |
| 原 子 量 | [209](標準原子量は定義されていない) |
| 融 点 | 254 |
| 沸 点 | 962 |
| 密 度 | 約9.2 |
| 存 在 度 | 地球 ほぼゼロz(極微量)/宇宙 ほぼ0 |
| 代表的な製品 | 静電気除去装置、α線源、中性子発生装置、放射線研究、特殊熱源 |
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