ラ ド ン
Radon
1900年、ドイツの物理学者**フリードリヒ・エルンスト・ドルン(Friedrich Ernst Dorn)は、ラジウムから放出される放射性の気体を発見した。当初は「ラジウム・エマネーション(Radium Emanation)」と呼ばれ、ラジウムから放出される未知の気体と考えられていた。その後、この気体が独立した元素であることが明らかとなり、1923年に現在の名称であるラドン(Radon)が正式に採用された。ラドンは、最後に発見された天然の希ガス元素でもある。
元素名(Radon)は、親元素であるラジウム(Radium)に由来している。ラジウムの放射性崩壊によって生成されることから、この名称が付けられた。
ラドンは、第6周期・第18族に属する希ガス元素であり、無色・無臭の放射性気体である。電子配置は [Xe] 4f¹⁴5d¹⁰6s²6p⁶、価電子数は8個で、最外殻電子が完全に満たされているため、化学的には非常に安定している。ただし、キセノンと同様に特殊な条件ではフッ素化物(RnF₂など)を形成すると予測されている。希ガスの中では最も重く、密度は空気の約7.5倍にもなる。
天然では、ウラン238やトリウム232の放射性崩壊系列の途中で生成される。岩石や土壌中に含まれるラジウム226が崩壊することでラドン222が発生し、地中から大気中へ放出される。半減期は約3.8日であるため、大気中では希薄であるが、換気の悪い地下室や坑道では濃度が高くなることがある。
ラドンは、かつて放射線治療や放射線源として利用されたことがあるが、現在では医療用途はほとんどない。一方で、地質調査や地震予知研究、地下水の流動解析などの研究分野では、天然トレーサーとして利用されている。また、建築分野では住宅内ラドン濃度の測定が重要視されており、世界保健機関(WHO)は肺がんとの関連性について注意喚起を行っている。
| 元 素 記 号 | Rn |
| 陽 子 数 | 86 |
| 価 電 子 数 | 8 |
| 原 子 量 | |
| 融 点 | -77 |
| 沸 点 | -61.7 |
| 密 度 | 約9.73 g/L(0℃・1気圧、空気=約1.29 g/L) |
| 存 在 度 | 地球 極微量(ウラン・トリウム鉱石から生成) 宇宙 極めて微量 |
| 代表的な製品 | 実用製品はほとんどない(地質調査、放射線研究、ラドン測定器など) |
ラドンは、「私たちが毎日吸っている可能性のある放射性元素」です。
ラドンは岩石や土壌から絶えず放出されており、世界中の大気中に微量存在しています。通常の屋外ではすぐに拡散するため健康への影響はほとんどありません。しかし、地下室やトンネル、鉱山など換気が悪い場所では濃度が高くなることがあります。
世界保健機関(WHO)は、喫煙に次ぐ肺がんの主要な原因の一つとしてラドンを挙げています。ラドンそのものではなく、崩壊して生じる放射性微粒子が肺に付着し、長期間吸い続けることで肺がんのリスクが高まることが知られています。
一方で、日本は木造住宅が多く換気性能も比較的高いため、欧米の一部地域に比べると住宅内ラドン濃度は低い傾向があります。それでも、近年では建築物の高気密化に伴い、住宅内のラドン濃度測定が注目されるようになっています。
このようにラドンは、自然界に存在する放射線を理解する上で最も身近な放射性元素の一つなのです。
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