鋳造用語集

サマリウム
Samarium

1879年、フランスの化学者**ポール・エミール・ルコック・ド・ボアボードラン(Paul Émile Lecoq de Boisbaudran)は、希土類鉱石であるサマルスキー石から得られた酸化物を詳細に分析する過程で、新しい希土類元素を発見した。彼は分光分析によって未知の元素であることを確認し、新元素を「サマリウム」と命名した。その後、1901年にフランスの化学者ウジェーヌ・ドマルセー(Eugène-Anatole Demarçay)が高純度のサマリウムを分離し、その性質が明らかとなった。サマリウムは、分光分析によって発見された代表的なランタノイド元素の一つである。

元素名(Samarium)は、発見のもととなった鉱石サマルスキー石(Samarskite)に由来している。この鉱石は、ロシアの鉱山技師ワシーリー・サマルスキー=ビホヴェツ(Vasily Samarsky-Bykhovets)にちなんで名付けられたものであり、サマリウムは人名に由来する最初の元素として知られている。

サマリウムは、第6周期・ランタノイド系列に属する希土類元素(レアアース)であり、銀白色で比較的硬い金属である。電子配置は [Xe] 4f⁶6s²、価電子数は3個で、通常は+3価の酸化状態を示すが、一部では+2価も安定に存在する。空気中では比較的酸化しやすいものの、他の軽希土類元素より耐酸化性に優れている。磁気的・中性子吸収特性にも優れ、工業的に重要な希土類元素の一つとなっている。

天然では主にモナザイト、バストネサイト、サマルスキー石などのレアアース鉱石中に含まれている。他のランタノイド元素と混在して存在するため、高純度のサマリウムを得るためには溶媒抽出法などによる高度な分離・精製技術が必要となる。

サマリウムの代表的な用途は、サマリウム・コバルト磁石(Sm-Co磁石)である。この磁石はネオジム磁石ほどの磁力はないものの、高温でも磁力が低下しにくく、耐食性にも優れているため、航空宇宙機器、人工衛星、防衛機器、高性能モーターなど、高温環境や高い信頼性が求められる用途で広く利用されている。また、サマリウム153は放射性医薬品として骨転移によるがん性疼痛の緩和治療に使用されるほか、サマリウムは原子炉の制御材や特殊ガラス、レーザー材料などにも利用されている。

元   素   記   号   Sm
陽      子      数  62
価   電   子   数  3
原      子      量
融                点   1072
沸                点   1797
密                度   7.52
存      在      度   地球 約7.1 ppm    宇宙 約0.0005 ppm
代表的な製品  サマリウム・コバルト磁石(Sm-Co磁石)、航空宇宙機器、人工衛星、高性能モーター、原子炉制御材、放射性医薬品(Sm-153)、レーザー材料、特殊ガラス
-こぼれ話-
サマリウムは、「ネオジム磁石の影に隠れた実力者」ともいえる元素です。
現在、最も有名な永久磁石はネオジム磁石ですが、高温環境では磁力が低下しやすいという弱点があります。一方、サマリウム・コバルト磁石(Sm-Co磁石)は、300℃を超えるような高温でも安定した磁力を維持できるため、航空機エンジン周辺や人工衛星、宇宙探査機、防衛機器など、「絶対に故障が許されない」環境で活躍しています。
一般にはあまり知られていませんが、「地球上で最も過酷な環境で使われる永久磁石」の多くはサマリウムが支えているのです。

 

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