鋳造用語集

イッテルビウム
Ytterbium

1878年、スイスの化学者**ジャン・シャルル・ガリサール・ド・マリニャック(Jean Charles Galissard de Marignac)は、エルビウムの酸化物を詳細に分析する過程で、それまで単一の物質と考えられていたエルビアの中に新しい希土類元素(レアアース)が含まれていることを発見した。彼は新元素の酸化物を「イッテルビア(Ytterbia)」と名付けた。その後1907年、フランスのジョルジュ・ユルバン(Georges Urbain)とオーストリアのカール・アウアー・フォン・ウェルスバッハ(Carl Auer von Welsbach)がほぼ同時にイッテルビアをさらに分離し、その中にルテチウムとイッテルビウムの2元素が存在することを明らかにした。1929年には高純度のイッテルビウムが得られ、その性質が確立された。

元素名(Ytterbium)は、スウェーデン・ストックホルム近郊のイッテルビー(Ytterby)という小さな村に由来している。この村は、イットリウム(Y)テルビウム(Tb)エルビウム(Er)イッテルビウム(Yb)の4元素の名称の由来となったことで知られ、世界で最も多くの元素名の由来となった場所として化学史に名を残している。

イッテルビウムは、第6周期・ランタノイド系列に属する希土類元素であり、銀白色で柔らかく延性に富む金属である。電子配置は [Xe] 4f¹⁴6s²、価電子数は2個であるが、化学的には通常+3価の状態が最も安定であり、一部では+2価も比較的安定に存在する。ランタノイドの中では比較的蒸気圧が高く、反応性もやや大きい。空気中では徐々に酸化するため、通常は酸化を防ぐ環境で保管される。

天然では主にモナザイト、ゼノタイム、バストネサイトなどのレアアース鉱石中に他の希土類元素とともに含まれている。単独鉱床はほとんどなく、高純度のイッテルビウムを得るためには、溶媒抽出などによる高度な分離・精製技術が必要となる。

イッテルビウムは、高出力ファイバーレーザーの発振材料として極めて重要な元素である。イッテルビウムを添加した光ファイバーは、高効率で高出力のレーザー発振が可能であり、金属切断、レーザー溶接、レーザーマーキング、3Dプリンターなどの産業用レーザーとして広く利用されている。また、イッテルビウム原子時計は現在最も高精度な光格子時計の候補の一つであり、次世代の時間標準として研究が進められている。さらに、一部のステンレス鋼や特殊合金へ添加することで、機械的性質や耐食性を改善する用途もある。

元   素   記   号   Yb
陽      子      数  70
価   電   子   数  2(通常は、+3価として振る舞う)
原      子      量 173.045
融                点   819
沸                点   1196
密                度   6.90
存      在      度   地球 約3.2 ppm  宇宙 約0.0003ppm(質量比)
代表的な製品   高出力ファイバーレーザー、レーザー加工機、レーザー溶接機、レーザーマーキング装置、光格子時計、特殊ステンレス鋼、精密計測機器
-こぼれ話-
イッテルビウムは、現在のレーザー加工技術を支える代表的な元素です。
近年、自動車や航空機、半導体製造の現場では、「ファイバーレーザー」が急速に普及しました。その中心となっているのがイッテルビウム添加光ファイバーです。従来のCO₂レーザーに比べて電気から光への変換効率が高く、メンテナンス性にも優れているため、現在では金属加工用レーザーの主流となっています。
また、イッテルビウムは次世代の「世界で最も正確な時計」の候補でもあります。イッテルビウム原子を利用した光格子時計は、数百億年に1秒も狂わないとされるほどの精度を目指して研究が進められており、将来はGPSや宇宙探査、地球科学などの分野で重要な役割を担うと期待されています。こうした最先端技術を支えることから、イッテルビウムは「未来の精密技術を支える元素」とも呼べる存在です。

 

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