2015年に3Dプリンターが注目をあび始めて以来、SLA方式の低価格化やPBF方式の応用で金属プリンターが開発され、プロトタイピングの生産様式が劇的に変わりました。
プロトタイピングの中でも機能部品の試作では【金属化のニーズ】が高く、高い硬度を持った樹脂での代用や、金属3Dプリンターの需要が増えています。
とはいえ、金属3Dプリンターがあれば、どんな形状でも作ることができるわけではなく、まだまだ形状に制約はあります。それに加えて、価格も以前よりは低価格にはなっているものの、気軽に購入できる金額ではありません。
今回は低価格・短時間でプロトタイピングや試作品を金属化できる、3Dプリンター×ロストワックス鋳造のコラボレーション技術をご紹介します。
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低価格・短時間で金属化できる鋳造法
プロトタイピングを金属化する鋳造法の中でも、低価格・短時間でできるのがロストワックス鋳造です。
この鋳造法の中には、さらにセラミックシェル法(シェル法)とブロックモールド法(ソリッド法)と呼ばれる2種類の方法があります。
ロストワックス鋳造の2つの方法比較
鋳造法 | セラミックシェル法 | ブロックモールド(ソリッド)法 |
設備投資 | 1億~数億円 | 1,000~2,000万円 |
寸法精度 | 高い | 低い 3Dプリンター樹脂モデル使用で高い精度が出せる |
緻密性 | 限界あり | 緻密な形状でも対応可 |
製造品サイズ | 両手に抱えられる程度の大きさ | 片手で持てる程度の大きさ |
生産時間 | 鋳型作製:5~7日間 焼成:オートクレーブを利用する場合短い | 鋳型作製:1日 焼成:6~8時間 3Dプリンター樹脂の場合8~10時間の場合あり |
生産コスト | 金型を使うため高額 生産数量により単価が変わる | 金型レスで低額 金型を使わないため |
今回ご紹介する方法は、ブロックモールド(ソリッド)法です。なぜこの方法で低価格・短時間を実現することができるのでしょうか。
低価格の秘訣:金型ではなくゴム型
ブロックモールド法は、シリコンゴムを使用したゴム型で製造します。金属の代わりにシリコンゴムを使用するので、型の材料費を抑えることができます。
また、セラミックシェル法と比べて寸法精度は劣るものの、3Dプリンターを使えばかなり向上します。
設計変更が多く必要な場合は特に全体的なコストダウンが見込めます。
設備そのものの価格
では、設備にかかる費用はどうでしょうか。
金属プリンターは精度がしっかりしているもので3000万~数億円、セラミックシェル鋳造法は1億~数億円します。
対して、ブロックモールド法の鋳造設備の費用はおおよそ800~1000万円ですので、イニシャルコストも各段に抑えることができます。
相場が気になる場合は、一度業者に見積りを依頼するといいでしょう。
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短時間の秘訣:型作りが内製化できる
通常金型を外注すると、完成までおおよそ45~90日かかります。CADデータを入稿したり、設計変更をしたものを再発送して社内で検討する、といったやりとりにかなり時間を要します。
ロストワックス鋳造でセラミックシェル法では5~7日かかる鋳型作製も、ブロックモールド法は1日です。
金属プリンターもおおよそ1日で完了しますが、一度にできる数量には限りがあります。例えば一度に複数必要な場合でも、ブロックモールド法であれば1個とおおよそ同じ時間でできるのが特徴です。
試作品・プロトタイピングの内製が実現できれば、社内で都度設計変更を指示することができ、すぐに次のステップへと進むことができます。
但し、欠点として、鋳物のサイズに制約がある点です。現時点では、概ね10×20cm以下の製品サイズであれば簡単に作製が可能です。
3Dプリンターとロストワックス鋳造のコラボレーション
ブロックモールド(ソリッド)法による3Ðプリンター樹脂の金属化は、すでに一部の歯科技工や宝飾品の生産では一般化しています。
宝飾業界では以前のようにひとつのデザインをみんなが欲しがる時代が過ぎてしまい、現在では既にCADと3Ðプリンターを使って少量生産やオンリーワン製品など付加価値を付けてつくることが一般化してきています。
宝飾業界の少量生産のコンセプトで言えば、プロトタイピングや試作品も全くこれと同じで、3Dプリンターとロストワックス鋳造で極小ロット生産やワンオフ生産も低コストで可能となります。
弊社では3Dプリンターから鋳造ライン設備を整えており、これまでにも実績が多数ございます。
現在とどれくらいコストが変わるのか、まずはお客様のご状況を聞きながら最善策をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。