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吉田キャスト工業株式会社

メーカーが教えない『失敗しない鋳造機の選び方』6選

宝飾品の生産において、鋳造機は欠かせないアイテムです。

しかしジュエリーをつくる道具として、鋳造機は決して安価なものではありません。予算の中で自分に合った装置を選ぶことが無駄のない投資になるでしょう。

 

ひとくちに『鋳造機』といっても、大きさや鋳造方法にはいくつかのタイプがあります。会社やご自分が作りたいものや生産量にあわせた、あなたのベストマシーンを選びましょう。

 

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そもそも鋳造機を購入する必要があるのか

近年では、地金価格の変動や消費者ニーズの変化、経済状況などで宝飾品の製造を取り巻く環境や生産体制そのものが変化してきました。

 

設備を揃えると、イニシャルコストだけでなく固定費なども上昇します。また、地金の在庫や管理も必要ですので『含み損』のリスクもある中で、自社生産を外注に切り替える企業があるのも事実です。

 

しかし一方では、外注により発生するリスクも充分に考えなければなりません

外注の場合、品質が不安定になったり、発注量によっては後回しになり納期調整に問題が発生したり、デザイン盗用の可能性などのデメリットが挙げられます。

 

鋳造機の購入はこのメリットとデメリットを天秤にかけて判断することがとても重要です。

 

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カタログスペックだけで判断するのはNG

値段の高い鋳造機や性能のいい鋳造機だからといって、必ずしもあなたに見合った鋳造機とは限りません

 

鋳造機のサイズ(溶解量)や生産量(月産や日産)はもとより、鋳造する金属に適切な鋳造方案の選択、そしてそれぞれのデメリットなども加味した包括的な判断をしないとオーバースペックの鋳造機を購入することになります。

 

鋳造機の選択はカタログスペックだけでなく、お客様のニーズや予算にあわせた適切な規模の設備や、必要な装置のレイアウトなど、購入前・購入後の2つの段階で相談に乗ってくれるメーカーや販売店を選ぶことも非常に大切です。

 

またメーカーによっては鋳造前工程の設備の導入をお勧めし、鋳造機の予算が確保できるまでのあいだ外注先を紹介してくれるところもあります。

 

ブライダルをやるのか

これからも『生き残るジュエリー / Ever-lasting Jewellery』の代表格がブライダルジュエリーやアニバーサリー・ジュエリーです。

この分野の生産をするのか、しないのか?この選択が鋳造機を選ぶ鍵となります。

 

ブライダルの代表格であるプラチナには当然プラチナ用の鋳造機が必要ですが、最近注目度が上がってきているステンレスの鋳造を行う場合にもこれが必要です。

 

もちろん、真ちゅうやブロンズなどの銅合金洋白銀などの卑金属で勝負する方法や、例えば赤銅や四分一など、貴金属合金の品位を落とした金属を扱っていく方法もあります。
ニーズの細分化した現代の市場では、素材の多様性も大きな武器になるでしょう

 

プラチナの宝飾品を生産するのか

鋳造の観点からすると、鋳造金属は以下の4つのカテゴリーに分類できます。

① ピューターホワイトメタルなどの低融点金属 (融点500℃以下)

② 一般的な金属(融点600~1200℃)

③ プラチナやステンレスなどの高融点金属 (融点1200~1800℃)

④ ニオブタンタルタングステンなど超高融点金属(融点1800℃以上)一般的な鋳造機では鋳造不可。

⑤ その他、チタンなどの酸化の激しい金属など。アーク溶解の鋳造機。

 

宝飾ではもちろん金や銀が主体になるので②の一般的な金属か、③のプラチナなどの金属です。宝飾品の鋳造では、ブライダルなども想定した『プラチナの宝飾品を生産する』かどうかで鋳造機のタイプが分かれます。
(※一定以上の割合でパラジウムが混合された高融点ホワイトゴールドの鋳造には、プラチナ用の鋳造機が必要です>)

 

受注型の鋳造工場をおやりになる場合は、鋳造可能な金属の種類を増やすことでも受注量が変わりますので、充分検討が必要です。

 

鋳造機の購入は、自社製品や委託鋳造の場合において、どのような金属をメインにするのか、そしてどの程度の生産量を想定するかを検討し、将来目標とする生産量を加味した設備を充分検討することをお勧めします。

 

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鋳造機は『大は小を兼ねる』とは限らない

生産量が多ければ溶解量が多く、当然対応する鋳型のサイズも大きな鋳造機が必要です。しかし、大きければ『大は小を兼ねる』のか?

正解は、『いいえ』です。

 

当社も鋳造を販売して生業を立てていますので、売り上げを考えれば『大きい=高額』の方が好ましいのはあたりまえです。しかし、大きな鋳造機(溶解量の多い鋳造機)で少量の地金を溶解する場合、実はいくつかのマイナスポイントがあります。

 

生産量に対して鋳造機が大きすぎると『生産コストが上がる』だけでなく、『溶湯の正しい温度測定ができない』ときや『装置の故障につながる』など、思いもよらないデメリットもあります。

 

デメリットについては、関連記事で詳しく説明しています。

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生産量に対して、あえて小さな鋳造機や焼成炉を選ぶケースも

例えば、3Dプリンターやワックス切削用のCNCなど、デジタルでオンリーワン製品を作るとします。

 

リングであれば一つの鋳型に数本というところでしょう。大きな鋳型の容積に見合った数量の鋳造品がまとまるまで待つことになりり納期を長めに取る必要があります

 

納期を短くする場合、大きすぎる鋳型に少ない本数を立て込むことになり、埋没材が無駄になる場合もあります。

 

もし、小さい鋳造機1台と小さい焼成炉が数台あれば、それぞれ時間をずらして効率よく焼成と鋳造が可能となります。生産の小ロット化が進む中、こんな設備の方法もあるのです。

 

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鋳造の質を上げる鍵は『鋳造方案』

あたりまえですが、『良品率』が上がれば『不良率』が下がります。不良率が下がれば、結果的に生産性が向上するということです。

 

鋳込み不良』など決定的な失敗は論外ですが、『形になる』程度であればどの鋳造機でも結果に大差がないのは事実です。しかし『鋳巣』など包括的な鋳造の質を求めるのであれば、金属や形状に合った鋳造方案を選ぶことも大切です。

 

鋳造機で『なんでもできます』の『できる』は、おおむね75~80点くらいと思ったほうが無難です。

鋳造の出来栄えで100点を取るのは、正直言って至難の業です。しかし、作りたい製品の形状や金属に合わせた鋳造機や鋳造条件を選択することで、85~95点になる可能性があります。

 

鋳造品の品質が上がれば、後工程の手間が省けて生産性の向上につながります。

 

『アナログ』と『デジタル』どちらを選ぶ?

近年では、メモリーを呼び出してワンタッチで鋳造が可能なデジタル機が増えました。

『自動鋳造』により、運転者の経験に左右されず安定した品質で効率よく生産できるのが最大の利点です。

 

とても便利ですが、例えばプラチナの割り金として銅を入れる場合、溶解時に煙が発生することにより正確な計測ができず、入力温度での自動鋳造が行えないデメリットもあるのです。

 

アナログ鋳造機は古いイメージがありますが、デジタル機のデータでは補えない細かな鋳造が行えるため、デザイン形状が一定ではない場合には結果的に品質向上につながります。

 

メーカーによっては、『アナログ鋳造機』と『デジタル鋳造機』のメリットを組み合わせたデジアナ鋳造機を販売しているところもあります。

 

それぞれの鋳造内容や作り手の状況を考慮して、『アナログ』『デジタル』『デジアナ』の3択から選んでみてください。

 

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『鋳巣はできません』は嘘!?

よく『この鋳造機を使えば鋳巣はできません』などと言う人がいます。

 

鋳巣とは、溶けた金属が取り込んだガスが、凝固時に金属外へ放出される際に発生するガスの抜け跡のことですが、溶解時にガスを一切取り込まない金属はほとんどありません。その跡が目に見えるかどうかだけの問題です。

なので『鋳巣はできません』は嘘です

 

残念ながら、鋳造は良い鋳造機や設備を導入しただけではよい結果は生まれません。必要なのは、鋳造者の『向上心』と、それを助ける『技術サポート』です

 

日本の宝飾業界は、他業界と比べて技術懇談会やシンポジウムなどが極端に少なく、どちらかというと技術的には閉鎖的です。『頼れるのは自分の経験だけ』という傾向が強いので、効率的な技術習得が困難です。

 

鋳造機のメーカーが操作方法の説明や故障時の修理をしてくれるのは当たり前ですが、『どうしたらより良い鋳造ができるのか』鋳造技術の情報公開を行ってくれるメーカーを選ぶことで、購入後も安心して鋳造を続けることができます。

※鋳巣の発生原因は、ガスの放出だけではありません

 

鋳造機の選び方のまとめ

鋳造機を正しく選ぶ方法は、とにかく要望の詳細をどれだけ具体的に把握しておくかがポイントです。

 

要望の詳細ポイント

  1. 作りたいデザイン形状
  2. 鋳造対象の金属
  3. 経験者の有無
  4. 短中期的な生産量

鋳造機の情報はインターネット社会でもあまり露出していないからこそ、詳細を検討・把握した上でメーカーへ相談してみると良いでしょう。

 

鋳造機に関するご相談はこちら

 

鋳造機選びのポイントを以下にまとめています。大きな買い物だからこそあなたに合った鋳造機を購入してください。

鋳造機の選び方まとめ

  • カタログスペックだけで判断するのはNG
  • プラチナや非貴金属の生産を計画するのか
  • 生産量、大きさ、デザイン形状などから適切な鋳造法案を選ぶ
  • 『アナログ鋳造機』『デジタル鋳造機』どちらが自分に適しているのか
  • 鋳造の技術サポートがしっかりしているメーカーを選ぶ