溶態化処理(ようたいかしょり)
Solution Treatment / Solution Heat Treatment
徐冷で発生する析出を防止する方法。
熱処理する合金を固溶限温度以上に加熱してこの状態を保ち、合金元素を原子の状態で溶け込ませ過飽和状態にさせてから急冷する熱処理方法。
『金属を高温化で溶かし、結晶の再配列や改善を行うことによって、材料の性質や機能を向上させる熱処理法。』
(熱処理技術ナビより抜粋)
『化合物となっている合金元素を原子の状態で溶け込ませるための熱処理。』
(ブリタニカ国際大百科事典より抜粋)
合金の内部の応力の除去や耐食性の向上を目的として、特にオーステナイト系ステンレス鋼や高マンガン鋼に用いられる。
例えば、オーステナイト系のステンレス鋼の場合、加熱することによりクロム炭化物や窒素をオーステナイトに固溶させた後、固溶元素の析出を抑えるために急冷し固溶体をつくることにより、内部応力を除去し、耐食性を向上させる。
また、眼鏡製品などでベリリウム銅製品のバネ性を向上させるために溶態化処理を行っている。
例:オーステナイト系ステンレス鋼の溶態化処理
ステンレス鋼をオーステナイト化することにより局部腐食を防止し、強度を増す。
1. 加 熱 1000℃から1100℃に加熱
2. 保 持 一定時間温度を保持。この過程で合金元素が溶け込み、固溶体を形成。
3. 急 冷 温度保持後、急冷。
これにより、再び炭化物を固相内に溶け込ませ、
粒界腐食などの局部腐食を防ぐ。
例:銅とアルミニウムの溶態化処理
焼き入れ及び焼き戻しによりアルミニウム合金の硬度を向上させる。
1. 加 熱 アルミニウム中には常温で銅は0.3%しか固溶しない。
584℃で5.7%固溶する。
0.3以上5.7以下の銅をアルミニウム中に固溶させるため584℃で加熱。
2. 保 持 一定時間温度を保持。この過程で銅元素が溶け込み、固溶体を形成。
この時点では、アルミニウムは軟化する。
3. 急 冷 温度保持後、急冷。
これにより、アルミニウム中の銅を過飽和にする。
4. 焼き戻し 焼きもどすことにより、過飽和の銅を析出させ
アルミニウムの硬度を上げる。
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