鋳造用語集

逆V字偏析(ぎゃくぶいじへんせき)
Inverse V-Segregation / Inverse V-shaped Segregation

偏析の一種。
鋳造されたインゴットやビレット(円柱状の鋳造品)の中心軸付近に、V字を逆にした(開口部が上を向いた)ような、孤立した濃化帯が多数連なって現れる現象。
これらの濃化帯は、溶質元素(例えば、炭素アルミニウム合金など)の濃度が高くなってく。

発生原因

鋳造中に液体金属が凝固するとき、凝固収縮による体積減少を補うために、デンドライト(樹枝状結晶)の枝と枝の間の隙間を伝って、濃度の濃い残液溶質の多い液体)が下向きに流れることで発生すると考えられてる。この流れが中心軸付近で特定のパターンを作り出す。

冶金学的な影響

■  機械的性質の低下
濃度の濃い部分と薄い部分が混在するため、機械的性質(強度、靭性など)が不均一になり、特にその部分を起点として亀裂が発生しやすくなる。

  熱間加工性の悪化
偏析部分の融点や相変態温度が周囲と異なるため、圧延や鍛造などの熱間加工時に割れや欠陥の原因となることがある。

■  腐食耐性の低下
濃化帯の存在により、耐食性が局所的に低下することがある。

回避策については、V字偏析を参照してください。

 

V字偏析と逆V字偏析のちがい

特   徴V字偏析逆V字偏析
形   状V字型(開口部が下向き)の組織が中心軸に沿って並ぶ。逆V字型(開口部が上向き)の組織が中心軸に沿って並ぶ。
発生位置インゴットの中心軸特に下部から上部にかけてインゴットの中心軸(特に上部付近)。
偏析の傾向負の偏析(溶質元素の濃度が薄い部分が多い)正の偏析(溶質元素の濃度が濃い部分が多い)
主なメカニズム凝固に伴う収縮により、デンドライトの隙間を通って残りの液体金属(溶質の濃い部分)が上方に吸い上げられる際に、その濃い部分が通過した痕跡(逆に溶質の薄い部分が通過・凝固した痕跡)として残る。凝固収縮による体積減少を補うため、デンドライトの隙間を通って溶質の濃い残液が下方に流れ込むことで、その濃い残液が孤立した形で凝固して発生する。

 

 

 

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