Mn/S比(えむえぬえすひ)
Mn/S Ratio
鋼材に含まれるマンガン (Mn) と硫黄 (S) の含有量の比率を指す。
この比率は、鋼の製造工程、特に「熱間加工(熱い状態での加工)」における品質を保つために極めて重要な指標となる。
「不純物である硫黄の悪影響を、マンガンでどれだけ中和できているか」を示す指標。
現場では、材料が熱い時に割れないよう、この比率を一定以上に保つことが鉄則となっている。
Mn/S比の重要性
鋼の中に硫黄(S)が含まれていると、通常は鉄と結びついて硫化鉄 (FeS) を形成する。しかし、このFeSには以下の非常に厄介な性質があります。
■ 融点が低い
鉄の融点(約1,538℃)よりもはるかに低い温度(約988℃)で溶けてしまう。
■ 粒界に広がる
鋼の結晶の隙間(粒界)に網目状に広がって固まる。
この状態で鋼を熱間加工(1,000℃以上での圧延や鍛造)しようとすると、結晶の隙間にあるFeSが先に溶けてしまい、加工中に鋼がバラバラに割れてしまう。これを「赤熱脆性(せきねつぜいせい)」または「熱間脆性」と呼ぶ。
■ マンガンの役割
ここにマンガン(Mn)を加えると、マンガンは鉄よりも硫黄と結びつきやすいため、FeS の代わりに硫化マンガン (MnS) を形成する。
MnSは融点が約1,610℃と非常に高く、熱間加工の温度でも溶けないため、赤熱脆性を防ぐことが可能となる。
Mn/S比の計算と推奨される比率
Mn/S比の計算式は、以下の通りとなる。
算出された数は無次元量のため、単位はない。
Mn/S比 = マンガンの含有量(wt%)/ 硫黄の含有量(wt%)
例:Mnが0.60%、Sが0.02%の場合、比率は0.60 / 0.02 = 30となる。
| 用 途 | 推奨のMn/S比 | 備 考 |
| 一般的な鋼材 | 10以上 (一般には20〜40) | 安全に熱間加工を行うための標準的な値。 |
| 溶接用鋼材 | 10〜15以上 | 溶接時のひび割れ(高温割れ)を防ぐため。 |
| 鋳 鋼 (Cast Steel) | 3.5以上 | 凝固時の割れを防ぐ最小限のライン。 |
| 快 削 鋼 | 比較的低め | 被削性(削りやすさ)を上げるため意図的にSを増やすが、加工性を保つため一定の比率は維持する。 |
Mn/S比の影響
■ 比率が低すぎる場合
前述の通り、硫化鉄 (FeS) が生成され、加熱した際にひび割れや破断が起こりやすくなる。
■ 比率が高すぎる場合
硫黄を抑え込みすぎて MnS が少なくなると、切削加工の際に切り屑が切れにくくなり、加工性が低下することがある。また、過剰なマンガンは鋼の性質(硬さや靱性)を変化させる要因にもなる。
鋳造用語 索引
