鋳造用語集

熱間脆性(ねっかんぜいせい)
Hot Shortness / Red Shortness / Thermal Brittleness 

熱脆性のひとつで、主に高温(熱間)での加工時(鍛造や圧延など)に、材料が割れたりもろくなったりする現象を指す。
「赤熱脆性(せきねつぜいせい)」と同じ意味で使われることがある。
この現象は、直接的ではないものの、包晶反応とも関わりがある。

「熱脆性」と「熱間脆性」の2つの言葉は、文脈により使い分けがされる。

 熱 脆 性
「ある温度で材料が脆くなる性質」について、一般的・学術的に表現される場合。

 熱間脆性
「高温で鍛造やプレス加工をしたら割れてしまった」などの現場でのトラブルや加工性を表現する文脈の場合に使われる。

 

代表的な熱間脆性/オーステナイト系ステンレス鋼

特に、磁石に付かないオーステナイト系ステンレスは、熱間脆性に注意が必要である。

■ 原 因
主にの中の硫黄(S)と結合して硫化鉄(FeS)となり、これが結晶粒界に網目状に分布する。
この硫化鉄の融点が鋼の加工温度より低いため、加熱されると粒界がドロドロに溶けた状態液相になり、加工の衝撃でバラバラに割れてしまう。

 対 策
マンガン(Mn)を添加して、硫化鉄よりも融点の高い硫化マンガン(MnS)に変えることで防げる。
→ Mn/S比

アルミニウム合金

アルミニウムの場合、不純物よりも「合金成分そのもの」のバランスが熱間脆性を左右する。

 原 因
シリコン(Si)やマグネシウム(Mg)などの含有量。

 メカニズム
固まり始めの温度液相線と完全に固まる温度固相線の差が大きくなると、その中間温度域で「液体と固体の混ざった脆い状態」が長く続く。
ここで熱収縮の力が加わると割れが発生する。

■ 脆性のピーク
面白いことに、純アルミや成分が非常に多い合金よりも、成分が数%程度の「中途半端な組成」のときに脆性が最大になる性質がある。

 

銅 合 金

銅合金は、不純物による熱間脆性が非常に顕著に出る材料である。

■ 原因物質
(Pb)ビスマス(Bi)アンチモン(Sb)など。

■ メカニズム
これらの物質はにほとんど溶けず、結晶粒界に集まる傾向がある。
特に鉛やビスマスは融点が非常に低いため(鉛:327℃、ビスマス:271℃)、熱間加工や溶接の温度域では液体になって粒界をドロドロに溶かしてしまう。

■ 影 響
わずかな不純物でも、高温で加工しようとするとボロボロと崩れるように割れてしまう。

 

金 合 金

K18など、特に銅を含む金合金でも熱間脆性は問題になる。

■ 原因物質
(Pb)ケイ素(Si)、または過剰な銅(Cu)

■ 現 象
鋳造した後の冷却中や、サイズ直しのための再加熱中に、粒界に濃縮した低融点成分が原因で割れてしまうことがある。
これを「熱割れ(ホットクラック)」と呼ぶ。

 

ニッケル基合金(インコネルなど)

ジェットエンジンなどに使われる高級な材料でも発生する。

■ 現 象
延性低下脆性(DDC: Ductility Dip Cracking)

 特 徴
液体が残っているわけではないのに、ある特定の高温域(融点より少し低い温度)で、結晶粒界の滑りなどが原因で急激に延性が失われる現象。
これは高度な合金設計が必要な材料特有の悩みである。

 

 

 

 

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