鋳造用語集

ダームスタチウム
Darmstadtium

1994年、ドイツの重イオン研究所(GSI:Gesellschaft für Schwerionenforschung、現在のGSIヘルムホルツ重イオン研究センター)のシギュルト・ホフマン(Sigurd Hofmann)らの研究グループは、鉛208にニッケル62イオンを照射する実験を行い、原子番号110の元素の合成に世界で初めて成功した。生成された原子はわずか数個であったが、その崩壊系列を解析することにより、新元素であることが確認された。

発見は国際的に認められ、2003年、国際純正・応用化学連合(IUPAC)は元素名を「ダームスタチウム(Darmstadtium)」と正式決定した。

元素名(Darmstadtium)は、発見地であるドイツ・ヘッセン州の都市ダルムシュタット(Darmstadt)に由来している。この都市には超重元素研究で世界をリードするGSIがあり、ボーリウムハッシウムマイトネリウムレントゲニウムコペルニシウムなど数多くの超重元素が発見されている。

ダームスタチウムは、第7周期・第10族に属する遷移金属であり、人工的に合成される超重元素である。電子配置は理論上 [Rn] 5f¹⁴6d⁸7s² と予測され、価電子数は10個である。周期表では白金(Pt)の下に位置し、化学的性質も白金に類似すると考えられている。しかし、原子番号が非常に大きいため、相対論的効果の影響を強く受け、電子配置や化学的性質には白金とは異なる特徴が現れる可能性があると予測されている。

天然には存在せず、重イオン加速器を用いて人工的に合成される。生成される原子数は極めて少なく、最も長寿命の同位体でも半減期は十数秒程度であるため、現在までに化学実験はほとんど行われていない。そのため、融点・沸点・密度・化学的性質の多くは量子化学計算による理論予測である。現在は、超重元素の電子構造や相対論的効果、「安定の島(Island of Stability)」の研究など、基礎科学の重要なテーマに利用されている。

元   素   記   号   Ds
陽      子      数  110
価   電   子   数  10(理論値)
原      子      量
融                点   約1500 - 2000(理論値)
沸                点   約3500(理論値)
密                度   約35(理論値)
存      在      度   地球 天然では存在しない    宇宙 確認されていない
代表的な製品  実用用途なし(超重元素・基礎研究用)
-こぼれ話-

ダームスタチウムは、「世界有数の元素発見都市」の名前を持つ元素です。
元素名の由来となったドイツのダルムシュタットは、一つの都市としては世界でも珍しく、多くの超重元素が発見された場所です。ここにあるGSIでは、ボーリウム(Bh)、ハッシウム(Hs)、マイトネリウム(Mt)、ダームスタチウム(Ds)、レントゲニウム(Rg)、コペルニシウム(Cn)などが次々と合成されました。
つまりダルムシュタットは、現代版の「元素の都」ともいえる存在です。
また、ダームスタチウムは現在までに合成された原子数が極めて少なく、人類が一度に目にしたことのあるダームスタチウム原子は、世界中を合わせても数十個程度と考えられています。そのため、その性質の多くは理論計算によって予測されており、将来さらに長寿命の同位体が合成されれば、新しい化学的性質が明らかになることが期待されています。

 

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