拡散型変態(かくさんがたへんたい)
Diffusion Transformation
金属や合金の原子が長い距離を移動(拡散)することで、結晶構造や原子の配置が変化する現象の広義。
この変態は、比較的ゆっくりとした冷却時に、安定した新しい相が核を形成し、それが成長していくことで進行する。
無拡散型変態(Diffusionless Transformation)と対象をなす概念。
拡散型変態の種類
無拡散型変態には、以下のような種類がある。
拡散の速度は温度に依存するため、冷却速度を調整することで、望ましい組織と機械的性質を得ることがで可能となる。
■ 同素変態 (Allotropic Transformation) |
同素変態とは、単一の元素が温度や圧力によって結晶構造を変化させる現象を指す。 最も有名なのは鉄の同素変態である。 |
■ 共析変態 (Eutectoid Transformation) |
共析変態とは、一つの固相が冷却によって二つの異なる固相に分解する現象。 |
■ 共晶変態 (Eutectic Transformatio共晶変態 |
共晶変態は、液体(溶融金属)が冷却によって二つの異なる固相に同時に凝固する現象。 厳密には固相変態ではないが、原子の拡散が本質的な役割を果たすため、拡散型変態として扱われることがある。 はんだ(鉛-スズ合金)が代表的な共晶変態を利用した製品。 |
■ パーライト変態 (Pearlitic Transformation) |
パーライト変態とは、共析変態によってオーステナイトからパーライトが形成される変態のこと。フェライトとセメンタイトが交互に層状に並んだ組織を形成。 |
■ ベイナイト変態 (Bainitic Transformation) |
パーライト変態とマルテンサイト変態の中間に位置する変態として分類される。 ベイナイトは、微細なフェライトとセメンタイトの混合物で、硬さと靭性の両方を兼ね備えている。 |
■ 析出硬化変態(Precipitation Hardening Transformation) |
析出硬化変態は、時効硬化とも呼ばれ、特定の合金の強度を高めるために用いられる熱処理。 |
■ スピノーダル分解(Spinodal Decomposition) |
スピノーダル分解は、合金が特定の温度範囲で不安定になることで、組成の異なる2つの相に自発的に分離していく現象。 |
■ マルエージング鋼の時効変態 (Aging Transformation in Maraging Steels) |
マルエージング鋼は、マルテンサイトを形成させた後、時効処理によって金属間化合物が析出することで硬化する鋼。 この過程で起こる変態は、原子の拡散を伴うため、析出硬化変態の一種と見なされる。 |
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