日本のカスタマイズ鋳造機メーカー

吉田キャスト工業株式会社

鋳造用語集

マグネシウム
Magnesium

1755年、スコットランドの化学者ジョゼフ・ブラック(Joseph Black)は、マグネシアが石灰とは異なる物質であることを明らかにし、マグネシウム化合物の存在を認識した。その後1808年、イギリスの化学者ハンフリー・デービー(Humphry Davy)がマグネシウム化合物を用いた電気分解によって金属を得ることに成功し、新しい元素として確認された。さらに1831年には、フランスのアントワーヌ・ビュシー(Antoine Bussy)が塩化マグネシウムを還元することで、よりまとまった量の金属マグネシウムを得ることに成功した。

元素名(Magnesium)は、古代ギリシャの地名マグネシア(Magnesia)に由来する。この地域で産出する鉱物が古くから「マグネシア」と呼ばれていたことが名称の起源となっている。なお、マンガン(Manganese)も名称の歴史をたどるとマグネシアに関連する言葉に行き着くため、両者の名称は似ているが、化学的にはまったく異なる元素である。

マグネシウムは、第3周期・第2族に属するアルカリ土類金属元素である。電子配置は [Ne] 3s²、価電子数は2個で、通常は+2価を示す。銀白色の軽金属で、密度は約1.74と、アルミニウムの約2.70、の約7.9と比較して非常に軽い。実用金属の中でも特に軽量であり、比強度に優れる。一方、化学的には活性が高く、粉末、切粉、薄片などは着火しやすい。燃焼すると非常に強い白色光を発することも特徴である。

天然には単体では存在せず、マグネサイト(MgCO₃)、ドロマイト〔CaMg(CO₃)₂〕、カーナライトなどの鉱物として広く存在する。また、海水中にもマグネシウムイオン(Mg²⁺)として大量に含まれている。地殻中にも豊富に存在し、希少金属ではない。工業的には、塩化マグネシウムの溶融塩電解や、ドロマイトなどを原料とする熱還元法によって製造される。

マグネシウムの最大の特徴は軽さである。アルミニウム、亜鉛、マンガンなどとの合金として、自動車部品、航空宇宙部品、電子機器筐体、機械部品などに利用される。軽量化によって輸送機器の燃費やエネルギー効率を改善できるため、構造材料として重要である。また、マグネシウムは鉄鋼の脱硫、チタン製造の還元剤、防食用の犠牲陽極、照明材料などにも利用される。さらに生体にとっても必須元素であり、植物では葉緑素(クロロフィル)の中心にマグネシウムが存在するなど、生命活動にも重要な役割を持っている。
打ち上げ花火の白い色は、マグネシウムの火花。

元   素   記   号   Mg
陽      子      数   12 
価   電   子   数   2
原      子      量   24.3050
融                点   648.8
沸                点   1091
密                度   1.738
存      在      度 地球  約23000 ppm    宇宙 約600 ppm(質量比・概算)
代表的な製品 マグネシウム合金、自動車部品、電子機器筐体、航空宇宙部品、球状黒鉛鋳鉄、犠牲陽極、鉄鋼脱硫剤、花火・ノートパソコンの外箱

マグネシウムと鋳造

マグネシウム合金は流動性が比較的良く、ダイカストによる薄肉・複雑形状の大量生産に適している。自動車部品、電子機器筐体、機械部品などに利用され、軽量化が大きな利点となる。

一方、溶融マグネシウムは非常に活性が高く、大気と接触すると酸化・燃焼しやすい。
特にマグネシウムの燃焼は強烈な白色光と高温を伴い、いったん激しく燃焼すると一般的な水による消火は危険となる場合がある。そのため、溶解・鋳造では溶湯表面の酸化・燃焼を抑えるための適切な保護雰囲気、フラックス、設備、作業管理などが重要となる。

また、溶湯の酸化物巻込みやガス、収縮なども鋳造品質に影響するため、マグネシウム合金では軽さだけでなく、活性の高い溶湯をどのように安定して扱うかが重要な鋳造技術となる。

球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)とマグネシウム

マグネシウムは、球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄/ノデュラー鋳鉄)の製造にも極めて重要である。
一般的なねずみ鋳鉄では、黒鉛は薄い片状の形で析出する。この片状黒鉛は先端部に応力が集中しやすいため、鋳鉄の引張強さや延性を低下させる原因となる。
そこで溶湯に少量のマグネシウムを添加して処理すると、黒鉛を球状に成長させることができる
黒鉛が球状になることで応力集中が大幅に緩和され、鋳鉄でありながら高い強度と延性を持つ球状黒鉛鋳鉄となる。
ただし、マグネシウムは溶融鉄中でも非常に反応性が高く、酸素や硫黄と強く反応する。特に硫黄が多い溶湯では、添加したマグネシウムが硫黄との反応に消費され、黒鉛球状化に必要な有効マグネシウム量が不足する。
そのため球状黒鉛鋳鉄では、溶湯中の硫黄量を管理したうえでマグネシウム処理を行い、適切な残留Mg量を確保することが重要である。

マグネシウムは、軽量鋳造合金そのものとして重要であるだけでなく、わずかな添加によって鋳鉄の黒鉛形状を変え、材料の機械的性質を大きく変化させる元素でもある。

ーこぼれ話ー
昔のカメラが生んだ、まぶしい白い光

マグネシウムには、燃えると非常に強い白色光を発するという特徴があります。
この性質は、かつて写真撮影にも利用されていました。
19世紀後半から20世紀前半にかけて、暗い場所で写真を撮影するため、マグネシウムを利用したフラッシュが使われるようになりました。
初期にはマグネシウム粉末を含む材料を燃焼させ、その一瞬の強烈な光を写真撮影の照明として利用していました。その後は、マグネシウムなどを封入したフラッシュバルブも普及しました。
現在のカメラやスマートフォンでは電子式のフラッシュが使われるため、撮影のたびに金属を燃やすことはありません。
しかし、「フラッシュを焚く」という言葉の背景には、実際に材料を燃焼させて光をつくっていた時代があったのです。
マグネシウムの光は非常に強いため、花火や照明弾などにも利用されてきました。
一方、この強い光はマグネシウムが激しく酸化している証拠でもあります。
写真を明るく照らした性質と、鋳造時に酸化・燃焼へ注意しなければならない性質は、実は同じマグネシウムの高い反応性から生まれています。

一つの性質が、ある場面では便利な「光」となり、別の場面では管理すべき「燃焼」となるところも、マグネシウムの面白い特徴です。

 

鋳造用語 索引