鋳造用語集

緑 青(ろくしょう)/ パティナ
Patina / Copper Patina / (Verdigris)

銅や銅合金が大気中で長期間腐食することによって表面に形成される、青緑色~緑色の腐食生成物(Patina)の総称。
英語表記での Verdigris は、銅に生じる青緑色の腐食生成物や、歴史的に顔料として使われた銅塩を指す言葉。緑青の訳語として使われるが、patina とは完全に同義ではない。

緑青は一つの物質ではない

緑青は「一種類の化合物」ではない。
銅が空気中の酸素、水分、二酸化炭素、硫黄酸化物、塩化物などと長期間反応することで、環境に応じて複数の銅化合物が形成される。

代表的には、
■   塩基性炭酸銅:炭酸塩を含む環境で形成
■   塩基性硫酸銅:都市・大気環境などで形成
■   塩基性塩化銅:海岸地域など塩化物の多い環境で形成
などが緑青を構成する。

どのように緑色になるのか

銅を屋外に置いて、すぐに鮮やかな緑色になるわけではない。
実際の色の変化を大まかにいうと・・・

金属銅 → 酸化物などの初期腐食生成物 → 褐色~黒褐色の表面 → 青緑色の安定した腐食生成物

というように、長い時間をかけて表面状態が変化する。

最初の銅は赤褐色だが、大気中で酸化されると酸化第一銅(Cu₂O)などが形成され、さらに環境中の成分と反応して、最終的に特徴的な青緑色の皮膜へ発達してゆく。
このように時間とともに形成される表面皮膜をパティナ(Patina)と呼ぶこともある。

ニューヨークのリバティ島にある「自由の女神」(Statue of Liberty)もその代表例である。フランスから寄贈され、1886年に完成した当時は、現在のような淡緑色ではなく、銅板本来の赤褐色に近い色をしていた。その後、大気中の酸素や水分、二酸化炭素、硫黄化合物などとの反応によって表面の腐食生成物が変化し、長い年月をかけて現在の特徴的な淡緑色の緑青に覆われるようになった。

鋳造品との関係

鋳造分野では、緑青は必ずしも「自然に発生する腐食」としてだけ扱われるものではない。
銅や青銅、黄銅などの美術鋳物では、薬品や加熱などを利用して表面を意図的に反応させ、緑色、褐色、黒色などの色調を作る着色・古美仕上げが行われる。
例えば、青銅像の表面色は、合金そのものの色だけではなく、表面に形成された酸化物や銅塩などの皮膜によって大きく変化する。

したがって鋳造品における緑青は、
「防ぎたい腐食生成物」である場合と、「意図的に利用する表面表現」である場合の両方があるという点が面白いところである。

 

-こぼれ話ー
緑青に対する誤解

■   緑青は銅を腐食させる悪者なのか?
緑青そのものは銅の腐食によって生じた生成物ですから、「銅がまったく腐食していない」という意味ではありません。
しかし、緻密で安定した緑青皮膜が形成されると、外部からの水分や酸素などと銅素地との接触を抑え、その後の腐食速度を低下させる保護皮膜として働くことがあります。

■  緑青は猛毒」は本当?
日本ではかつて、「緑青には猛毒がある」というイメージが広く存在しました。
しかし、緑青を一律に「猛毒」とみなすのは適切ではありません。
一方で、銅化合物である以上、摂取量や化学形態によって人体への影響はあり、食品や飲料に接触する材料では適切な管理が必要です。
したがって、
「緑青は猛毒だから触れてはいけない」も、「まったく無害だから何をしても問題ない」も、どちらも正確ではない
という理解が適切です。

 

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