ワックスツリーの形状は、鋳造方案(鋳込み時に加わる力の方向性)や鋳造品の大きさなどにより望まれる形状が異なります。
また、融点の違いや金属の種類によっても形状を変えることが望まれます。
今回は、吸引鋳造のワックスツリー立てをご紹介します。
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吸引鋳造の吸引力は上から下方向に加わるため、鋳造物は鋳型に対して垂直に取り付けるのが基本です。
一方向性吸引鋳造/通常のステンリング使用
一方向性吸引の場合には、鋳造物を垂直に取り付けることに加え溶湯が直下に流れるため、湯口と反対側の鋳型の壁を厚めにします。
鋳型の底が薄いと、吸引力に負けて破ける可能性があるからです。
一方向性吸引鋳造の理想的なワックスツリー
下図は一方向性吸引鋳造での、好ましいワックスツリー形状です。
この形状は溶湯が製品部に到達する時間が長いので、スラグなどの不純物やガスの巻き込みが少なくて済みます。
一方、鋳造機の鋳込み能力にもよりますが、温度を高くするなどして鋳込み不良が発生しないような工夫が必要です。
鋳込み不良(湯回り不良)|鋳造欠陥の種類から見る『鋳造品で失敗しがちな4つの原因』①
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製品が大きい場合のワックスツリー①
製品の縦方向の寸法が長いと、鋳型に収容しきれない場合があります。この場合には下図のような形状にします。
また、繊細な製品形状にも有効です。但し、鋳込み時間が例1と比べて短いので、不純物やガスの巻き込みなどが発生するリスクがあります。
別記事の『ワックスツリー立ての3原則|鋳造で大事な湯道方案』でも解説した通り、ワックスツリーの先端部周辺はホットスポットとなるため、例2の場合鋳造温度を高くすると製品の鋳肌が熱により荒れる可能性があります。
鋳肌の荒れ|鋳造欠陥の種類から見る『鋳造品で失敗しがちな7つの原因』②
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※加圧鋳造や多方向吸引でも同じように取り付けることが可能です。
製品が大きい場合のワックスツリー②
製品単体が大きい場合には、湯道を湯口から製品部に直接取り付ける方法もあります。
湯口の直下に製品を取り付けるとホットスポットが発生しやすくなるため、湯道を曲げて取り付けます。
溶解時にスラグが発生する金属や凝固までの時間が長い金属の場合は、『くの字』の部分に湯溜まりを取り付けると、鋳込み時の溶湯の乱流を抑制することができます。
多向性吸引鋳造/穴あきステンリング使用
多方向性吸引の吸引力は、下方だけでなく鋳型周囲にあけられた穴からも加わります。
このため、ワックスツリーは加圧鋳造と同じ形状になります。
加圧鋳造のワックスツリー立て方法は、こちらを参照ください。
加圧鋳造のワックスツリー立て│鋳造で大事な湯道方案
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