ガリウム
Gallium
1875年、フランスの化学者ポール・エミール・ルコック・ド・ボアボードランは、閃亜鉛鉱から抽出した亜鉛の発光スペクトル中に、未知の紫色のスペクトル線を発見した。これは、それまで知られていなかった元素の存在を示すものであり、彼はこの新元素をガリウムと命名した。その後、同年中に閃亜鉛鉱からガリウムを分離・精製することにも成功している。
ガリウムが発見される以前、ロシアの化学者メンデレーエフは、周期表上のアルミニウムの下に未知の元素が存在すると予測し、これを「エカアルミニウム」と呼んでいた。メンデレーエフが予測した原子量や密度などの性質は、後に発見されたガリウムの性質と非常によく一致しており、周期表の正しさを裏付けた代表的な元素としても知られている。
ガリウムは、銀白色をした柔らかい金属である。融点は約29.8℃と非常に低く、通常の室温では固体であるものの、手のひらに載せると体温によって溶けることがある。一方、沸点は約2,200℃以上と非常に高いため、固体から液体へは容易に変化するが、液体から気体にはなりにくい。このため、ガリウムは極めて広い温度範囲で液体として存在できる金属である。
また、ガリウムは多くの一般的な金属とは異なり、凝固する際に体積が増加する。つまり、液体から固体になると膨張する性質を持っている。この性質は水が氷になる際の変化と似ており、固体のガリウムは液体のガリウムに浮く。
ガリウムは、インジウムやスズなどと合金化することで、純ガリウムよりもさらに融点を低くすることができる。代表的なものが、ガリウム・インジウム・スズからなる液体金属合金「ガリンスタン」である。ガリンスタンは常温より低い温度でも液体を保つことができ、水銀に比べて蒸気圧が低く、比較的毒性も低い。そのため、水銀を使用しない体温計や温度計の感温液、熱伝達媒体などに利用されている。
ガリウムとインジウムからなる共晶合金も、常温付近で液体となる代表的なガリウム合金である。液体でありながら電気を通し、変形しても導電性を保つことから、柔軟な電子回路、伸縮センサー、ウェアラブル機器、放熱材料などへの応用研究が進められている。こうした液体金属合金は、固体金属では難しい、曲げたり伸ばしたりできる配線材料として注目されている。
一方で、ガリウムはアルミニウムの結晶粒界へ浸透し、強度を著しく低下させることがある。アルミニウム製品に液体ガリウムが付着すると、外見上は大きな変化がなくても、脆くなって破壊する可能性がある。このため、ガリウムやガリウム合金の保管容器や使用設備には、アルミニウムを使用しないなどの注意が必要である。
現在、ガリウムの最も重要な用途は、ガリウムそのものを金属材料として使う用途よりも、ガリウム化合物を用いた半導体材料である。代表的なものに、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)がある。
ガリウムヒ素は、電気を光へ効率よく変換でき、高速・高周波での動作に優れている。このため、赤外線発光ダイオード、レーザーダイオード、太陽電池、スマートフォンの通信回路などに使用されている。
窒化ガリウムは、高い電圧や高温に耐え、高速で電流を切り替えられる性質を持つ。シリコン半導体よりも電力損失を小さくできるため、急速充電器、電気自動車、基地局、電源装置などの小型化・高効率化に利用されている。また、青色や緑色の発光ダイオード、レーザーダイオードにも欠かせない材料である。
ガリウムは単体では使用量の少ない金属であるが、低融点合金、液体金属、半導体という特徴的な用途を通じて、温度計からスマートフォン、LED、通信設備、電気自動車に至るまで、現代社会を支える重要な元素となっている。
ガリウムは多くの金属と合金を形成し、特に低融点合金へ利用されている。純ガリウムにスズやインジウムを加えると融点が下がることは、NISTの資料でも確認されている。王立化学会もガリウムが多くの金属と容易に合金を形成し、主に低融点合金へ用いられると説明している。
また、ガリウム・インジウムは共晶金属である。
名前の由来は、フランスを意味するラテン語「Gallia」とされる。
| 元 素 記 号 | Ga |
| 陽 子 数 | 31 |
| 価 電 子 数 | 3 |
| 原 子 量 | 69.723 |
| 融 点 | 29.7646 |
| 沸 点 | 約2,229 |
| 密 度 | 5.91 |
| 存 在 度 | 地球 16 ppm |
| 代表的な製品 | 赤外線発光ダイオード、レーザーダイオード、太陽電池、スマートフォンの通信回路など |
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