ロジウム
Rhodium
ロジウムは、白金族元素(Platinum Group Metals:PGM)に分類される、原子番号45、元素記号Rhで表される金属元素であり、周期表では第5周期・第9族に属する遷移金属である。
銀白色の強い金属光沢を持ち、高い耐食性と耐酸化性を示す。また、地殻中の存在量が極めて少ない希少元素であり、貴金属の中でも特に希少な元素の一つである。
ロジウムは1803年、イギリスの化学者ウィリアム・ハイド・ウォラストン(William Hyde Wollaston)によって発見された。
ウォラストンは南米産の粗白金鉱石を王水で処理し、白金やパラジウムなどを分離する研究を行っていた。その残留物をさらに分析する過程で未知の金属を発見し、ロジウムとして分離した。
元素名Rhodiumは、ギリシャ語で「バラ」を意味する「rhodon」に由来する。これは金属そのものがバラ色をしているためではなく、ウォラストンが分離の過程で得たロジウムの塩が美しい赤色・バラ色を示したことに由来する。
ロジウムは天然に単体として存在することもあるが極めて稀であり、主として白金族鉱石やニッケル・銅鉱石中に微量含まれている。そのためロジウムだけを目的として鉱石を採掘することはほとんどなく、白金、パラジウム、ニッケル、銅などを製錬・精製する際の副産物として回収される。
世界の供給は特定地域への依存度が高く、特に南アフリカの白金族鉱床が重要な供給源となっている。この供給量の少なさと需要変動の大きさから、市場価格が大きく変動する金属としても知られている。
ロジウムの電子配置は一般に [Kr] 4d⁸ 5s¹ と表される。代表的な酸化数は+3であるが、ほかにも複数の酸化状態をとり、多様な錯体を形成する。
金属ロジウムは硬く、融点が高く、優れた耐食性を持つ。多くの酸に対して強い耐性を示し、高温における耐酸化性にも優れている。
また、可視光に対する反射率が高く、美しい銀白色の光沢を長期間維持しやすいという特徴を持つ。このことから、宝飾品のプラチナ色用メッキとしても使用されている。
| 元 素 記 号 | Rh |
| 陽 子 数 | 45 |
| 価 電 子 数 | - (N/A) |
| 原 子 量 | 102.90550 |
| 融 点 | 1966 |
| 沸 点 | 3695 |
| 密 度 | 12.41 |
| 存 在 度 | 地球 0.2 ppb 宇宙 0.344 |
| 代表的な製品 | 自動車エンジン・メッキ材 |
自動車排ガス触媒とロジウム
現在、ロジウムの最も重要な用途の一つが自動車排ガス浄化用の三元触媒である。
ガソリン自動車の排気ガスには、一酸化炭素(CO)、未燃焼炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)などの有害成分が含まれる。
三元触媒では、主として白金、パラジウム、ロジウムなどの白金族元素を組み合わせ、これらをより害の少ない物質へ変換する。
白金やパラジウムは主として一酸化炭素や炭化水素を酸化する反応に優れ、一方、ロジウムは窒素酸化物(NOx)を還元して窒素(N₂)へ変換する反応に特に優れている。
この性質によってロジウムは、排ガス中のNOxを低減するための重要な触媒材料となっている。
ロジウムは非常に高価であるため、自動車1台に大量に使用されるわけではない。しかし、少量でも高い触媒性能を発揮することから、世界的な自動車排ガス規制を支える重要な元素となっている。
メッキとロジウム
ロジウムは装飾用・機能用メッキとしても重要である。
銀白色で強い光沢を持ち、変色しにくく、硬度や耐摩耗性にも優れるため、ジュエリー、時計、装飾品などの表面処理に使用される。
ホワイトゴールドや銀製品では、表面に薄いロジウムメッキを施すことで、より白く明るい外観を与えるとともに、変色や細かな傷を抑える目的で利用される。
ただし、ロジウムメッキは非常に薄い皮膜であるため、長期間の摩擦によって徐々に摩耗する。そのためジュエリーでは、使用状況に応じて再めっきが行われる場合がある。
高温材料とロジウム
ロジウムは高い融点と耐酸化性を持つため、白金との合金として高温環境でも利用される。
代表的なものが白金-ロジウム合金(Pt-Rh合金)である。
白金にロジウムを添加すると、高温強度や耐久性などが向上するため、ガラス製造設備、実験器具、工業用部材などに利用される。
また、白金-ロジウム合金は高温測定用の熱電対にも利用される。代表的なものとしてR熱電対、S熱電対、B熱電対があり、1000 ℃を超える高温領域の測定に使用される。
このようにロジウムは、自動車触媒、ジュエリー、高温材料など、使用量そのものは少ないものの、その特性をほかの材料で代替しにくい分野で重要な役割を担っている。
金よりはるかに高くなったことがある金属
「高価な金属」と聞けば、まず金や白金を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
ところがロジウムは、市場価格が金や白金を大きく上回ったことがある金属です。
その理由は、ロジウムが非常に希少であることに加え、主としてほかの金属を採掘・製錬した際の副産物として得られるため、ロジウムの価格が上昇したからといって簡単に生産量を増やせないことにあります。
そこへ自動車の排ガス規制強化などによって触媒需要が増加すると、わずかな需給の変化でも価格が大きく動くことがあります。
しかし、面白いのはそれほど高価なロジウムが、ジュエリーでは表面を覆う「めっき」として身近に使われていることです。
ホワイトゴールドの指輪などに施されるロジウムめっきは非常に薄いため、高価な金属でも少量で美しい銀白色の表面をつくることができます。
そして、自動車ではさらに重要な仕事をしています。
排気ガス中の有害な窒素酸化物を減らすため、目に見えないほど少量のロジウムが触媒として働いています。
つまりロジウムは、「大量に使う金属」ではなく、「ごく少量だからこそ、その優れた性質を最大限に利用する金属」といえるのです。
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