【宝飾・アクセサリー】/銀の火ムラはなぜ起こるのか

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火ムラとは

火斑という表現は、銀-銅合金を扱う工芸品や装身具の世界で呼ばれている独特な表現で、ご存じの通り、銀-銅合金の表面にできるシミのような黒い斑点模様を指します。

特に鋳造品で火斑が出ることが多いと思いますが、溶解している銀-銅合金が凝固する際にはじき出される銅成分に偏りが出て、製品中の銅がローカルリッチになり、この酸化しだ銅が表面に現れたものが火斑です。
肉厚の薄い場所と比べ、比較的に肉厚の形状で起きる傾向があります。

製品の冷却は、物体の表層から内部に向かって進み、中心部が最後に凝固します。この一連の冷却過程で連続的に成分分布が変化し、表面と中心部の成分組成が変わってしまうからで、肉厚の製品の場合には、表層と中心部の冷却時間の差が大きくなるため、薄い物より火斑が発生し易くなります。

とにかく、火斑が出てしまうと、それを取り除くには、『やってみなければわからない』厄介な現象です。

 

火ムラができる原因

シルバーアクセサリーを製品として作られている方々では、シルバー925をお使いの方が多いと思います。スターリングシルバーに限ったことではありませんが、銀と銅を混ぜて合金にした場合、火斑の問題が常に付きまといます。火斑は銀-銅合金の宿命的な課題です。

少し難しい説明になりますが、銀と銅の合金が溶けているときは、この2つの元素が溶湯中で混合していますが、温度が下がって凝固が完了した段階では金-銀や金-銅合金のような固溶体にならず、双晶しない合金です。共晶点以外は、液相から固相になる温度に幅があるため、凝固する際に銀と銅が別々に金属結晶を作り始め、しかも温度により結晶のできる順番が違います。温度が室温に下がると銀と銅の固溶体は1%以下になります。

また、共晶点の配合(Ag 72%  Cu 28%) 以外の銀-銅合金の場合、銀の含有比率が高い場合には、中心部に近いほど銀の成分が多くなり、表層部に近いほど銅の成分が多くなります。銅成分が多い銀-銅合金の場合には、この逆となり表層近いほど銀成分が多くなります。このことから、理論上はスターリングシルバーよりコインシルバーの方が若干火斑の発生するリスクは少ないことになります。

このように液相から固相になる温度に幅がある金属は偏析が起きやすい合金で、銀-銅合金の場合は、場所により銀の成分が多くなったり、銅の成分が多くなったりします。銅成分が多くなり、その銅により局部的に生成された酸化物が黒く見え、これを火斑と呼んでいます。

別項の『【宝飾・アクセサリー】/銀と銅の合金について 』で詳しく説明していますので、より詳しい凝固のメカニズムをお知りになりたい方はご参照下さい。

 

火ムラの防止策

火斑は銀と銅の二元合金に代表される共晶型の合金に多く見られる現象で、銅が析出する際の偏析が原因であると説明しました。では、『防止策はあるのか』が一番気になるところだと思いますが、残念ながら100%防止する策はないのが現状です。

防止策ではありませんが、火斑が発生する確率を低くするという方法は、鋳造時、銀と銅が溶融状態のときに黒鉛棒で溶湯を良くかき混ぜること、そして、鋳造温度を低めに設定するなどして、内部と外部の冷却時間の差をなるべく短くするような工夫をして銅と銀の元素の偏りを少なくすることです。

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